女性のためのワークショップ「DVの対処法」

女性のためのワークショップ

「DVの対処法」

豪州在住の移民サポートを行うイミグラント・ウーメンズ・サポート・サービス(IWSS)が、日本人女性を対象としたワークショップを開催した。メイン・テーマである家庭内暴力(DV)に関する知識と対処法に加え、食と美容に関する講演や参加者同士の交流の時間も設けられ、充実した内容となった。同団体でDV相談窓口を担当するKaz氏は「当事者がDVを受けている自覚がないケースが多い」とその問題点を指摘する。正しい知識と対処法を身に着けることこそが、自分だけでなく周囲の人びとを守るための重要な1歩となる。(取材・文=村松安果)

DVにまつわる、さまざまな問題点

DVという言葉を聞くと、すぐにイメージするのは「叩く・蹴る」などの身体的な暴力ではないだろうか。IWSSのKaz氏によると、実際は9種類に分類されるという。身体的暴力の他に言葉の暴力や精神的暴力、経済的暴力、信仰や文化に対する暴力、社会的暴力、性的暴力、ストーキング、テクノロジー(ITを利用した精神的暴力)が挙げられる。特に精神的なDVの場合、被害者は正しい知識を持ち合わせていないために「自分が悪いから仕方がない」と我慢したり自分を責めてしまうことが多い。その結果、更に深刻な事態に発展してしまうのだ。

DVの被害が生まれる要因として日本でのケースと比べた際、言葉の壁や環境の違いなどによる問題がまず挙げられる。例えば、オーストラリアの習慣や法律などをよく知らない場合、パートナーに「別れたら子どもは引き取る」と言われるとその言葉を鵜呑みにしてしまうことがあり得る。自分の意見を伝えきれないことで次第にパートナーの言いなりになってしまうと共に、日本に住む家族と連絡を取ることからも遠ざかり、友人に会う機会も奪われて孤立するなど最悪のケースに陥ってしまうのだ。最近ではSNSを利用してパートナーを中傷するなどのケースも増えているそうだ。こうした従属的な関係を許してしまう理由には、パートナーが周囲に与えるイメージも関連している。「優しい人」「良い父親」という印象が強いことで、周囲がカップルの関係の変化やDVが起きている状況に気付けなくなるのだ。

各分野のプロが連携し被害者をサポート

セミナー・ルームのエントランスに貼られた案内。子ども連れの参加者もおり、会場は和やかな雰囲気だった
セミナー・ルームのエントランスに貼られた案内。子ども連れの参加者もおり、会場は和やかな雰囲気だった

IWSSでは、DV被害に遭った人の無料電話相談を受け付けている。日本語対応可能で、秘密は必ず厳守してくれる。電話で状況を話すと、必要に応じてカウンセリングや法律の分野などそれぞれの専門家を紹介してもらうことができる。ちなみにオーストラリアにはDVO(Domestic violence orders)というDV被害者を守るための法律があり、加害者を罰することなく民事裁判で和解することもできる。また弁護士に直接話をする必要はなく、サウスポート簡易裁判所にあるDVサポートシステムで相談することもできるという。

24時間対応の「DVコネクト」(Tel: 1800 811 811)やDVの緊急連絡先「000」に電話を掛ければ、時間帯や場所を問わずすぐに対応してくれる。英語での相談が不安な人は無料電話で通訳サービスを行ってくれる「TIS」(Tel: 131450)を利用するのがお薦めだ。緊急時にはまず「000」に電話し「Japanese please」と伝えれば通訳サービスにつないでくれる。他にもソーシャル・ワーカーに相談することができるセンターリンクという政府機関や、DV被害を受けた移民女性向けのサポートを行うSARAプログラムなど、多様なサポート団体がある。Kaz氏は、それらの情報提供も含めて相談者に合わせた解決方法を一緒に考えてくれる他、以前は被害者の避難先であるシェルターに勤務していたためシェルター内部の様子にも詳しい。

どうしても家から出たい時はシェルターに入るか、空きがない場合はモーテルを手配してもらうことができるという。収入がなくても問題なく、清潔感のある室内には生活に必要な物が全てそろっている。新しい生活基盤を作るためのステップとして滞在期間中に仕事や家探しを行い、子どもがいる場合は通常通りデイ・ケア・サービスにも通わせることができる。

「クライアントの中にはシェルターに逃げて来たにもかかわらずまたパートナーの元へ戻ってしまう人もいます。しかし、なぜ戻るのかと責め立てることはしません。本人の目指すゴールがどこにあるのかによって、解決方法もそれぞれだからです。ただ家を出るというだけでなく、戻ったとしてもなるべく安心・安全に暮らせる方法を一緒に考えることが私たちの仕事です」とKaz氏は語る。パートナーと離れると寂しさや悲しさがつのり、子どものためにも一緒に暮らす方が良いのでは、と考える人も多いそうだ。しかし加害者の行動を変えることは難しく、7〜8回シェルターに逃げては家へ戻ることを繰り返し、最終的には離れて暮らすことを選ぶ結果になるケースも多いという。

解決に向かうための第1歩を

被害に遭った時にサポートしてくれる機関は数多くある。しかし、サポートを受けるためには自分から助けを求めることが必要だ。パートナーとの関係の中で我慢していることが多かったり、違和感を感じる言動が続いたりする場合は、周囲の信頼できる人に相談するかIWSSの相談窓口で話をしてみよう。

これまでにも数々のDV被害者に寄り添ってきたKaz氏は、穏やかな表情でこう語る。

「ほとんどの相談が電話のみですが、それぞれが自分のつらい状況や気持ちを話してくださいます。いろいろなことで不安な気持ちがあるでしょうから、1歩踏み出すにはとても勇気がいるはずです。だからこそ、いつもクライアントの方には、助けを求めてくれてありがとうという気持ちでお話を聞かせて頂いています」

DV関連の情報を得ることで、自分が当事者ではない場合でも、家族や友人など身近な人が被害が遭った時に助けることもできる。大事なのは、被害が大きくなる前に予防することだ。永住者だけではなく一時的に滞在できるビザを保持している人でも相談することができるので、悩んでいる場合は勇気を持って最初の1歩を踏み出して欲しい。

配布資料にはDVに関するさまざまな情報が記載されている
配布資料にはDVに関するさまざまな情報が記載されている

■Immigrant Women’s Support Service
担当:Kaz(日本語対応・秘密厳守)
Tel: (07)3846-3490(月~水9AM~4PM)
Email: mail@iwss.org.au
Web: www.iwss.org.au

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