【最新版】就職活動の基本ノウハウ(オーストラリア編)

就職活動の基本ノウハウ

外国人である日本人がオーストラリアで働くために必要な条件とは何か。日本とオーストラリアでは何が違うのか。あるいは、日本に帰国してからの、オーストラリア滞在の体験を生かした就職活動のポイントは何か。就職活動の基本ノウハウを紹介する。文=空閑洋始

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オーストラリア国内での就職

年齢に関係ない能力主義

「就職」というと、日本の場合まず思い浮かべるのが、大学を卒業する時点での“一斉就職”。学生は3〜4年生の時に“就職スケジュール”にのっとって、たくさんの企業にエントリーをし、説明会に申し込み、面接を受け、晴れて内定を獲得し、4月1日に初出社、そろって入社式に臨むというのが一般的だろう。

1980年代中盤のバブル経済全盛期辺りから「終身雇用・年功序列制度の崩壊」「実力主義の台頭」といった勢いの良い言葉がマスコミをにぎわせ、人材の流動化が進み始めるようにも見えた。定年まで1つの会社に勤め続けるというスタイルがなくなってしまうような報道も多かった。確かに特にIT系企業など、人材の移動が激しい業種は増えてきており、また、中途採用に積極的な企業も以前より増えてきている。しかし、やはり就職というものを考える際、まずは大学卒業時点でどの企業を選ぶか、どの企業に自分は入れるのかといったことに話の中心が行く点は、今もあまり変わっていないように見える。

だが一方、オーストラリアにはこうした“一斉就職”のようなものはない。確かに「初めての就職」に限るならば、オーストラリアでも大学生の求職者の数が他の年齢層に比べて多くはなるだろうが、だからといって日本のように学生向けに就職スケジュールや就職シーズンがあるわけではないのだ。

企業の採用に対する姿勢も全く違うと考えた方がいい。日本の場合、新卒者と既卒(中途採用)者では、企業がそれぞれに求めるものが違う。

既卒者には即戦力としての能力が求められる一方で、新卒者に仕事のスキルがないのは当然とみなされ、どちらかといえば柔軟性や協調性、将来性といった点の方が重視される。仕事の能力は入社後トレーニングすればいいと考えられていることが多い。

ところがオーストラリアでは、既卒であろうが新卒であろうが、企業が求めるものは同じ。その人が具体的に何ができるか、仕事をやっていく能力があるかだ。

これは別の見方をすれば、新卒採用に力を入れている傾向が強く歳を取ってからの転職がいまだに簡単ではない日本に対し、オーストラリアでは、新卒、既卒、あるいは年齢などに関係なく、能力次第で仕事を見つけられる平等なチャンスが誰にでもあるということでもある。そして先述のように、いつから就職活動を始めていつ入社するといったスケジュールは存在しない。自由なのだ。

経験を積むには

しかしこの能力主義は、当然ながら厳しい側面を持っている。就職に経験や能力が求められるといっても、誰でも最初は経験なんてない。プロフェッショナルを目指しているのにそれにはプロフェッショナルの経験が必要であるという「鶏と卵」の関係が、最初の就職、あるいは自分にとって新しい分野へのチャレンジという時には付いて回る。ではどうすればいいのか。

その1つの道が、インターンシップやワーク・エクスペリエンス、ボランティアなど、無給の仕事で経験と実績を積んでからそれを就職活動につないでいくという方法だ。

例えばインターンシップ。日本でもインターンシップ制度が大学などでキャリア・プログラムの一環として導入されるようになって久しいが、日本の場合、学生の社会見学、もしくは、企業が早期に有望な学生を見つけ、“青田買い”するための1つのシステムという位置付けにある。どちらかといえば大学や企業主導型だ。一方、オーストラリアの場合は、各個人が、インターンの経験自体を積極的に自分のキャリアの1つにするという意識が強い。自分がこの先やりたい仕事と関連性の強い内容のインターンに応募し、無給ながらも専門的な経験を身に付ければ、それを次の段階で自分の能力をアピールする材料にできるというわけだ。場合によっては、インターンから社員に登用されるケースもある。

また例えば、最初はパートタイムでスーパーなどの商品陳列などの仕事をし、仕事ぶりが認められて管理業務に移り、徐々に重要な業務を任されていくといったパターンも、オーストラリアでは非常に一般的だという。一見遠回りに見えても、実はそれが一番確実なキャリアアップの道だったりもするのだ。

こうしたケースでは、何も1つの企業にずっととどまる必要もない。ある企業でそこそこの経験を積んだら、その経験を武器に、より条件の良い別の企業に転職する。それを繰り返してキャリアを積んでいく。つまり、1社に長く勤めるのではなく、2〜4年程度で会社を変わることがキャリアアップにつながると思われている。

このように、より高い給与やより高い役職などを意識して転職を繰り返すことを「ジョブ・ホッピング」(Job Hopping)といい、この言葉に対して否定的なイメージの強い日本とは正反対に、オーストラリアでは非常にポジティブなこととしてとらえられている。今回は詳しくは触れないが、キャリアを積み、自分の能力に自信が持てれば、自ら会社を起こすという道も十分考えられる(本ページ最下部コラム参照)。オーストラリアでは昨今、起業への関心も強い。

こうした、就職あるいは仕事というものに対する考え方の違いを、まずはしっかり確認しておいた方がいい。仕事を見つけるためには、自分の専門性をいかに伸ばすか、また、その伸ばした能力をいかにアピールできるかが非常に重要になる。

こうしたことは、次のページで解説する履歴書やカバー・レターの書き方の基本的な考え方にも関わってくる。つまり、自己アピールの仕方も、おのずと、日本とは違うやり方でやらなくてはならないということになる。

雇用の特色

●雇用形態

一般的に、オーストラリアにおける雇用形態は、1日の労働時間によって「フルタイム」(Full-time)か「パートタイム」(Part-time)に分けられ、雇用契約期間によって「正社員」、「コントラクト」(Contract)、「カジュアル」(Casual)などに分けられることが多い。

正社員は、有給休暇や有給病欠などの休暇制度、「スーパーアニュエーション」(Superannuation)という年金制度などが適用される。会社によっては病気などの治療費を負担してくれるところもある。

一般的に正社員はフルタイムの場合が多いが、労働時間がフルタイムより少なく勤務時間が固定されている場合が多いパートタイムでも、労働時間の長さによっては有休休暇や病欠休暇など、フルタイムの社員と同様の権利が与えられることもある。

いわゆる契約社員に当たるのが「コントラクト」。期間は6カ月、8カ月、1年など、期限付きの採用が基本。産休・育休に入った正社員の補欠要員として、その社員の復職まで代わりにそのポジションで働くという「マタニティー・コントラクト」を耳にした人もいるだろう。

「カジュアル」は、主として、労働力が必要な時だけ働くスタイル。「オン・ハイヤー」(On Hire)、「テンプ」(Temp)とも呼ばれる。需要のある時には正社員以上に働くこともあるが、仕事がない場合もあり、また有休などの権利もないので、給与水準は20〜25パーセントほど高めに設定されていることが多いようだ。

カジュアルは、人材派遣会社と雇用契約を結び派遣社員として働くケースを指す場合もある。給与や税金、退職年金などの手続きは人材派遣会社が行う。

日本の場合、健康保険、通勤交通費といったものも会社が負担あるいは一部負担するのが一般的だが、オーストラリアでは必ずしもそうではない。

●試用期間

新規採用の場合、ほとんどの企業で3カ月、まれに6カ月という試用期間(Probationary Period)を設けている。

●最低賃金

2016年4月現在、オーストラリアの最低賃金は、1時間当たり17ドル29セント、週38時間で656ドル90セントとなっている(Mywage.org/Australia、Web: www.mywage.org/australia)。これは、経済協力開発機構(OECD)が27カ国を対象に調査した中で首位である。

また、業種や経験などによって最低賃金は異なる。日本の労働基準監督署に類似する役割を果たしているFair Work OMBUDSMAN(Web: www.fairwork.gov.au)では、どんな仕事にいくら支払われるべきかなどが、オンライン上で計算できるようになっている。自分が希望する職種の賃金の目安として調べてみるといいだろう。ちなみに平均給与は週あたり1,145ドル70セント(2015年)。

●労働時間

正社員の場合、週38時間。時間外労働は妥当な範囲で認められるが、時間外勤務や週末の勤務の手当については、職種別の裁定(Award)に従うように決められている。こうした決まりは頻繁に変更されるので常に最新情報を入手しておく必要がある。

ビザ

外国人である日本人がオーストラリアで働くには就労許可が付いたビザが必要だ。例えば、永住ビザ(永住権)、就労系ビザ、ワーキング・ホリデー・ビザ、学生ビザなどである。

永住権があれば就労に関してほぼ制限がない。選挙権以外はほとんどオーストラリア国民と同じ権利が与えられる。学生ビザは、週の労働時間は20時間などと制限されている。ワーキングホリデー・ビザには、同じ雇用主の下では6カ月間までといった制限がある。

就労系ビザの中でポピュラーなのが、雇用主がスポンサーとなって社員のビザを申請するタイプ。ただし、審査が年々厳しくなってきており、申請者だけでなく会社に課される条件も少なくない。

求人情報を見ると、フルタイムの場合は、やはり条件として「永住権保持者」を挙げている場合が多い。ただ、パートタイムでも入れる可能性もあるかもしれないので、永住権を持っていない場合でも、果敢にトライしてみたい。

仕事の探し方

主な情報源としては、インターネットの求人サイト、新聞の求人欄、口コミ、大学や日本食料品店の掲示板などが挙げられる。

新聞は週の決まった曜日に求人広告を掲載している。例えばシドニーで発行されている『Sydney Morning Herald』紙は、土曜日に「MY CAREER」という求人広告欄を設けている。

しかしやはり現在の主流はインターネットでの情報収集だろう。オーストラリア政府の求人情報サイト「Australian Job Search」(Web: jobsearch.gov.au)や履歴書やポートフォリオが登録できる「Seek」(Web: www.seek.com.au)、「adzuna」(web: www.adzuna.com.au)、「Careerone」(Web: www.careerone.com.au)などがポピュラー。メールアドレスを登録しておけば、定期的に求人情報を送ってくれるので便利だ。

仕事を探すサイトではないが、Facebookに似たビジネス・プロフェッショナル向けのソーシャル・ネットワーク「Linkedin」(Web: www.linkedin.com)を活用している人も少なくない。自分の経験、スキルを上手にまとめて登録しておけば、企業などからコンタクトがある可能性もある。

またオーストラリアでは、企業と就職希望者を結ぶ人材紹介会社(Recruitment agenciesなどと呼ばれる)が発達しているので、該当する専門分野の職歴があれば登録しておくといいだろう。こうした人材紹介会社には新聞やインターネットに掲載されない求人もあるという。

日系の人材紹介会社もある。例えば「スタッフソリューションオーストラリア」(Web: www.ssaust.com.au)や「NMAUSTRALIA」(Web: www.nmaust.com)、「Advantage Professional」(Web: www.advantageprofessional.com.au)、「日本ブレーン・センター・オーストラリア(NBCA)」(Web: www.nbca.com.au)、などが挙げられる。

履歴書など

就職活動に当たり、英文の履歴書(カリキュラム・ビータイ/Curriculum Vitae: C.V.またはレジュメ/Resume)、履歴書に沿えるカバー・レター(Cover Letter)、また場合によっては推薦状(レファレンス・レター/Reference Letter)を用意しなければならない。

前述のように、日本とオーストラリアでは企業が応募者に求めているものが違うということをしっかり認識したうえで、履歴書で何を強調すべきか十分に注意をはらって作成にあたりたい。フォーマット(書く順番など)も異なる。

カバー・レターは、履歴書に書き込めない要素をアピールするアイテムでもある。自分がいかにそのポジションに興味を持って応募したか、ポジションにいかに適した人材かをアピールすることが大切になる。

また、これらの書類は、企業や職種によってどの部分をふくらませるべきかが変わってくるので、数種類用意しておく手もある。常にアップデートすることも忘れずに。

次のページで英文履歴書とカバー・レター作成のポイントを、実際の例を挙げながら具体的に解説したい。

インターン体験談
自分のスキルアップが望めるかをしっかり検討して選ぶ(S.C.さん)

長く子育て専業主婦だったのですが、勉強した知識だけでは就職は難しそうで、まずは経験が必要と思い、インターンに応募しました。職場では、経験の豊富なプロのスタッフの方々に、業界の流れやトレンドなど役立つ知識や情報を多く教えてもらいました。
 私のように社会からずっと離れていた人が社会に慣れるという意味ではインターンは最適だと思います。また、全くその分野の経験がなく、年齢を経てから新しい知識を身に付けたい場合もインターンは大変有効です。もっとも、歳を取ると、社会復帰にかなりエネルギーがいるので、その点は注意が必要です。また、インターンをする際、スキルが一定以上ある人ならば、目標をはっきりと決め、期間をきちんと限定した方が、流されずに次のステップに進めます。
 インターンを選ぶ際は、自分のスキルアップを望めるかをよく見極めることが大事。できれば、知識が豊富できちんと指導してくれるスタッフがいる職場を選び、自分からも積極的に学べるものを学ぶ姿勢が大切です。それから注意点として、インターンという口実でとにかくタダで働かせようというところもあります。利用されるだけにならないように、注意しましょう。

就活準備体験談
留学生の就活支援団体を活用。ワーホリの人々の話も参考に(マッコーリー大学 細川颯生さん)

就職活動の準備として、私がシドニーで実践していることは2つあります。1つは留学生などが中心となって主催する日本人留学生の就活支援団体「キャリスタ」(Web: careerstart.org.au)の活動への参加です。同じ留学生、そして就活生として、主催者と参加者が一丸となって就活情報の積極的な交換をはじめ、さまざまな活動を行っています。自己分析や面接対策など1人ではなかなかうまくできないものでも、参加者同士で意見交換できるので非常に良い機会になっています。このような実際的なメリットに加え、同じオーストラリアで勉強している留学生との交流を深め、輪を広げることで、就活に対する精神的な不安を軽減させることもできると思います。
 また、ワーキング・ホリデーで滞在中の方から話を伺うのも貴重な経験です。さまざまな業種の、社会経験が豊富な方々に出会える機会があるのは、留学生ならではの特権です。今まで自分が知らなかった業界・業種の話を聞くことで、こんな面白そうな世界もあるのかと驚き、私も仕事選びの幅を広げることができています。

Column
オーストラリアで起業する

オーストラリアは中小企業が市場の大半を占め、中小規模のビジネス売買も盛んだ。オーストラリア政府もスモール・ビジネスを促進し、資本金1ドルから起業が可能であることから、外国人でも比較的簡単に入りやすい市場と言える。オーストラリアでビジネスが行える事業形態は主に、①外国企業の現地法人や支店を含む会社、②合弁会社(パートナーシップ)、③個人事業主、などが挙げられるが、「現地法人の設立」が、オーストラリアの現地企業と同等の活動ができる一番の近道だ。現地法人を設立する場合、個人事業主になるのか、もしくは株式会社を設立するのか、を選択する必要がある。個人事業主の場合は、ABN(企業納税登録番号)の取得が必須。株式会社設立の場合は、ACN(オーストラリアン・カンパニー・ナンバー)の取得に加え、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)に、会社名や登録所在地、取締役の氏名、第1回目株式発行の詳細などを記載した必要書類を提出し会社登記を行う。外国人にとって最大の難関は「ビザ」の問題だ。オーストラリアは起業しやすいといっても、会社登記をする場合、取締役のうち1人は同国の市民権あるいは永住権保持者を登録する必要がある。こういった諸々の手続きは複雑な上、すべて英語で行われるので、弁護士や会計士、コンサルタントなどの専門家に十分相談することをお勧めする。(文=小副川晴香)

Column
スーパーアニュエーション(スーパー)とは

スーパーアニュエーションとは基本的には退職後の生活のための積み立てのこと。雇用主が被雇用者のために、給料の9.5パーセントをスーパー運用基金(Super Fund)に積み立てる。学生ビザ、ビジネス・ビザ、ワーキング・ホリデーなど、永住権を持たない日本人で、オーストラリア滞在中にスーパーアニュエーションに加入していた人は、帰国時などにオーストラリア国税局(ATO: Australian Taxation Office/Web: www.ato.gov.au)に換金請求をすることができる(全額は戻らない)。求人欄に「+Super」と書かれていることを見かけることがある。これは給料の他にスーパーアニュエーションが付くという意味だ。

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