【新コラム】ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第1回 キャサリン・ロングハースト(Kathrin Longhurst)
「Carried Away」

「Carried Away」 Oil on canvas 150 cm X 150 cm by Kathrin Longhurst
「Carried Away」 Oil on canvas 150 cm X 150 cm by Kathrin Longhurst

キャサリン・ロングハーストはユニークな地位を築いた女性と言えるだろう。東方圏の多くの移民と同様に、政治的なプロパガンダ(特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為)を経験したことは、アーティストとして力強い声明をキャンバスに向けて表現することとなった。女性モデルによって広告の成功が左右された時代。消費者主義が強く、男性目線で女性は聖人であったり、時には罪人であったりとカテゴライズされていた。オーストラリアではフェミニストの学者や作家がそこに注目し、西洋民主主義の基盤を構成する平等な権利についての議論を広げた。そのような時代にドイツからスウェーデンに移ったキャサリンは、スピーチや表現の自由などに対しての概念を探求することに目覚めたのだ。そしてオーストラリアに移り住み、古典的な比喩的技法を発展させ、画家の1人になるために奔走した。

主にファッション・美容の広告の世界で、アイコンとされている女性特有のグラマーな美貌を構成に取り入れたものが彼女の初期の作品に垣間見られる。フェミニストが性的な対象としての女性のオブジェクト化を批判した一方で、アーティストにとっては探求する題材として非常に魅力的なものであったと彼女は語る。キャサリンは、自身の作品を通し「プロパガンダニスト」として、女性たちが世界中で自らの居場所、そして自己決定のための身体的特徴や自身の欲望による権限が与えられるということを表現し発展させてきた。

女性のセクシュアリティーと自由をテーマにしている彼女の作品は、プロパガンダは一定の期間、国や政権に特有するものではなく、我々の周りのどこにでも存在するということを、ルビーの唇、明るい裸の肌などを通して表現している。また、キャサリンの最新の展覧会では、東/西、男性/女性、社会主義/資本主義、美しく描かれた作品を共産主義イデオロギーの深い風刺として読むことができるだけでなく、彼女の仕事に見られる相反する2つのフェミニズムの流れを取り入れている。

アートは人びとの社会生活において独特な役割を果たしていると言えるだろう。今日のアーティストたちは、誇りに思うべきもの、挑戦すべきものを映し出し、時には忘れてしまいたいものを思い出させることを意識し、作品を生み出しているのではないだろうか。

■Web: www.kathrinlonghurst.com
■Instagram: kathrinlonghurst


ルーシー・マイルス(Lucy Miles)
オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。クイーンズランド・カレッジ・オブ・アート並びにグリフィス大学でファイン・アート(ペインティング)の美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、QLD州のサウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Email: luceartbrands@gmail.com
■Web: www.luceartbrands.com.au

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