【QLD】ルーシーのアート通信「Colonial Hybrid Reimagined from Joseph Lycett-View of the Female Orphan School, near Parramatta」

ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第6回 アンナ・グリン(Anna Glynn)
「Colonial Hybrid Reimagined from Joseph Lycett-View of the Female Orphan School, near Parramatta」

Colonial Hybrid Reimagined from Joseph Lycett-View of the Female Orphan School, near Parramatta, 2017, Ink, watercolour & pencil, Arches paper 44cm×57cm 2017
Colonial Hybrid Reimagined from Joseph Lycett-View of the Female Orphan School, near Parramatta, 2017, Ink, watercolour & pencil, Arches paper 44cm×57cm 2017

ビクトリア州ヤラ・リバーの農家で生まれ育ったアンナ・グリンは、絵画や彫刻のみならず、音楽や映像、執筆なども手掛けるマルチ・メディア・アーティストとして活躍している。彼女は、さまざまな分野で受賞歴を持ち、“コロニアル・アート”を現代に広めた先駆者としても知られる芸術家だ。

“コロニアル・アート”とは、植民地時代の画家による水彩画やその手法を取り入れた芸術分野を指す。オーストラリアが植民地時代、流刑囚として来豪した英国人の画家・ジョセフ・リセット(1774-1825)は、同地で労働を強いられた流刑囚の集落の様子とオーストラリアの広大な自然、野生動物の要素を1枚の水彩画に描いた。植民地時代に活躍した画家の作品は英国に送られ、オーストラリアという新植民地の様子を伝えるツールとしての役割を成した。「オーストラリアはまるで欧州の田舎のような地」と読み取れる絵画は、欧州人に対して移住を示唆する引き金となった。

アンナはジョセフの作品の風景画をそのままに、流刑囚を擬人化した動物に変えて作品を制作した。歴史的な絵画にファンタジー要素を加え、いわばパロディー作品を産み出したことで、現代の“コロニアル・アート”を確立したのだ。アンナは、風景画をそのまま使用することにより、決して変えることができないオーストラリアの歴史や政策への批判を表し、エイリアンのように擬人化された動物から、オーストラリア人の起源は異人種から成り立っているということを発信している。

植民地時代に描かれたジョセフの作品は、オーストラリアを他国に伝える“広告”として利用され、彼の作品をパロディー化し、現代で活躍するアンナの作品は“歴史や文化”を伝える手段として、観る者に影響を与えている。1つの作品から2つのメッセージを世間に発信していることが評価されているのだ。動物がまるで人間のように行動するファンタジーの要素を作品に取り込む理由として、「ファンタジーの世界の中に何か違和感を抱くように、鑑賞者に普段当たり前のこととして流してしまっている出来事に対して疑問を抱き、熟考して欲しい」というアンナの思いが込められている。

彼女の作品は、4月28日までヌーサ・リージョナル・ギャラリーで開催されている展示会「Promiscuous Provenance」で鑑賞することができる。また、2016年にヌーサ・アート賞を受賞した映像作品「Cane」と「Above and Below」がクイーンズランド議事堂に収められている。

■Web: www.noosaregionalgallery.com.au
■Instagram: noosaregionalgallery


ルーシー・マイルス(Lucy Miles)
オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。クイーンズランド・カレッジ・オブ・アート並びにグリフィス大学でファイン・アート(ペインティング)の美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、QLD州のサウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Email: luceartbrands@gmail.com
■Web: www.luceartbrands.com.au

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