【QLD】ルーシーのアート通信「Wine Glass Bay」

ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第8回 ケン・ジョンソン(Ken Johnson)
「Wine Glass Bay」

Wine Glass Bay’, Acrylic on canvas, 213 x 330 cm (total 3 panels
Wine Glass Bay’, Acrylic on canvas, 213 x 330 cm (total 3 panels

自然溢れるオーストラリアの風景画を描く著名な画家と言えば、ガム・ツリーを描いたことで有名なハンズ・ヘイセンや光の表現力が評価されているエリオス・グルーナー、荒廃した土地の住民の様子を描くルッセル・ドライスデールなど、多くの名が挙げられる。中でも、シドニー生まれのケン・ジョンソンは、オーストラリアの海岸線や砂漠の風景画作品で高い評価を得ている画家だ。親日家の彼は、歌川広重の浮世絵から影響を受けた作品を2017年に三重県で開催された「Different Visions」展に出展するなど、その活躍は世界で認められている。

ケンは、目に見える現実の世界を描写する“モダニズム”と、現実ではあり得ないような奇妙な世界観を描く“シュルレアリスム”を融合させたスタイルの作品を制作している。1つの作品から正反対の技法を垣間見ることができるのだ。また、彼はイタリアやインド、そして日本に何度も訪れ各国の思想や古典的・現代的アート技術を積極的に採用している。

今回紹介する「Wine Glass Bay」はタスマニアで最も美しいと言われるパノラマ・ビューを描いた風景画作品だ。タスマニアの東部に位置する、フレシネ国立公園のハイキング・コースにあるルック・アウト・ポイントから見た風景が描かれている。絵画技術を駆使し、絵に奥行きを持たせることに長けているケンは、3枚のパネルに相反する淡いブルーとダーク・グリーンを用いて海と森林を描いた。複数のパネルを使用したのは、ワイン・グラスのような湾のカーブが1枚画よりも強調されるからだ。

同作品は展望台から見下ろしたシンプルな風景画のように見えるが、実は実際に目で見る景色にケン自身が創造した架空の空と霧のかかる山脈が描き足されている。現実とは異なる情景をさりげなくキャンバスに描くことで、作品に立体感が加わり、鑑賞者はまるで絵に吸い込まれるような感覚を覚えるのだ。また、写真家がレンズをのぞいた瞬間を描写した別の作品では、かつてピカソが採用したキュビスムという多数の立方体を用いて絵を構成するシュルレアリスムが導入されている。このように、ケン独自の被写体の見方、空間とのバランスや調和性の取り方、そして彼の表現力の幅が世界を魅了していると言える。

今回紹介した「Wine Glass Bay」を含む彼の絵画や彫刻作品は、ゴールドコーストのサウスポートにある「Gallery One」で6月30日まで展示されている。

■Web: www.kenjohnsonart.com
■Instagram: kenjohnsonartist


ルーシー・マイルス(Lucy Miles)
オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。クイーンズランド・カレッジ・オブ・アート並びにグリフィス大学でファイン・アート(ペインティング)の美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、QLD州のサウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Instagram: lucy_nsky
■Web: www.luceartbrands.com.au

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