巣やヒナを守るマグパイ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第23回 巣やヒナを守るマグパイ

朝晩、冷え込む日が続いています。野生動物たちの行動も鈍くなっているため、カランビン・ワイルドライフ・ホスピタルへやってくる患畜数も減り、短い冬ですが1年で今が最も静かな時期です。とはいえ、昼間は日が差して気温も上がるため、日光浴を楽しむトカゲや亀の姿もよく見られます。

もう少しでやって来る春に向けて、たくさんの動物たちが繁殖の準備を進めています。黒と白の鮮やかなコントラストでおなじみのマグパイ(Australian Magpie/カササギの一種)も、毎年7月ごろに巣作りを始め、メスは薄緑色の卵を産みます。それから20日間の間メスは卵を温め、オスはメスのためにエサを取ってきます。

マグパイの繁殖期は7~11月ごろ。攻撃的になっているので注意しよう
マグパイの繁殖期は7~11月ごろ。攻撃的になっているので注意しよう

繁殖期は11月ごろまで続きますが、この時期のマグパイを嫌う人も多いのです。というのも、巣やヒナを守るのに一生懸命なマグパイは、テリトリーに近づく人間やほかの動物に対して攻撃的になるからです。歩行者は巣から半径110メートル以内、自転車は半径150メートル以内が彼らの攻撃の対象となるといわれています。

攻撃の仕方は、木の上から直進するように飛んできて頭のすぐ上を通過するという脅しだけのものから、翼で叩く、クチバシで何度もつつくなどさまざまです。私も一度、近所を散歩中に突然後ろから頭を殴られたような衝撃を受けたと思ったら、マグパイだった、ということがありました。

マグパイは巣やヒナを守ろうと必死なだけなのですが、頭や顔、耳や目を攻撃されてケガをする人が毎年いるため、苦情を受けた地方議会が調査した上で、巣を強制移動するケースもあるようです。

今の時期から夏にかけてマグパイのテリトリーを人間が通る場合は、用心するに越したことはありません。帽子やサングラスを着用することはもちろん、盛んに攻撃を受ける場所では傘などを使って身を守ってください。自転車は降りて押して歩いた方が攻撃されにくく、また、樹上のマグパイを見つけたら目を逸らさずに早足で歩き去ることも効果的とされています。木の下に落ちたヒナを保護しようとした時に頭上から攻撃に遭うこともありますので、ヒナに明らかな異常が見られない場合はそっとしておくのが良策です。

子育てに一生懸命なマグパイと共存していくためにも、自分の身の安全を第一に考えましょう。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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