容器にはまったソトイワトカゲ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第27回 容器にはまったソトイワトカゲ

カランビン・ワイルドライフ病院での治療に携わるようになって4年経ち、QLD州南東部に生息する野生動物の種はほとんど見たことがあると思っていましたが、まだまだ経験不足だったと感じる出来事がありました。

容器から出られなくなったトカゲ(上)と、救出後の様子(下)
容器から出られなくなったトカゲ(上)と、救出後の様子(下)

スプリングブルック国立公園の近隣住民が、プラスチック容器に入って出られなくなっているトカゲを「何とか助けて欲しい」と病院に連れて来ました。そこには、イチゴ味のビタミン剤の容器に体の前半分がすっぽり入ってしまっているトカゲの姿が。かなり大きめのトカゲで、病院で頻繁に見るアオジタトカゲ(Blue-tongued skink)に良く似ていますが、色や尾の形が違います。「一体何だろう?」と思いながらも、まずは容器から出してあげることが先決です。

しっぽが切れないよう注意しながら引っ張ってみましたが、警戒しているのか全く動く気配がなく、力を入れて引っ張ろうにも体表のウロコで手が滑ってしまいます。容器の底の部分を切り、もしそれでだめならトカゲに麻酔をかけて動けなくしてから容器の口の部分を切ろうということになりました。

容器の底にハサミを入れると、中にいるトカゲの頭が見えてきました。ハサミの先が見えたためか体をバタバタと動かし始めたので、頭や体を傷つけないように更に慎重に切って行くと、なんと自分から後ずさりして容器から出て来ました。あっけない結末に、その場にいたスタッフやボランティアは大笑いでした。

中から出て来たのはソトイワトカゲ(Major skink)という、QLD州東海岸沿いとNSW州北東部、そしてニューギニア南部に生息し、果実や昆虫を食するトカゲでした。日本でもペットとして流通しているようです。きっと、イチゴの香りにつられて容器に入ってしまったのでしょう。

私にとっては初めて見るトカゲだったので、口先からしっぽまでまじまじと見つめてしまいました。幸いケガは全くなく、保護してくれた人がそのまま家に連れて帰り裏庭に放しました。

オーストラリアは野生動物の宝庫。まだ見ぬ動物との出会いはこれからも楽しみですが、できれば病院ではなく、自然の中で出会えることを願っています。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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