オーストラリア最小のフクロウ「アオバズク」

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第29回 オーストラリア最小のフクロウ「アオバズク」

春から夏にかけての暖かい季節に生まれたたくさんのヒナたちが、毎年この季節になると親鳥の元を離れていきます。しかしまだ羽が生えそろっていないうちから巣立ちの準備を始めるため、上手に飛べるはずもなく、木から落ちて巣に戻れなくなってしまうことも多いのです。けがもなく健康そのものという場合がほとんどですが、地面で隠れる場所もなく、鳴いて親鳥を呼ぶため、外敵に見つかってしまい攻撃を受けるヒナもいます。

11月に巣立ちのピークを迎えるアオバズク
11月に巣立ちのピークを迎えるアオバズク

オーストラリア全域で見られるアオバズク(Southern boobook)は、この国に生息するフクロウの中でも最も体が小さい種です。夜行性で大きな目が愛らしい鳥ですが、鋭い爪でネズミなどの獲物を捕って食べます。例年11月頃に巣立ちのピークを迎えますが、慣れない飛行中に車と接触してしまったり、他の鳥の縄張りに侵入し攻撃を受けてけがをしたところを保護され、病院に連れて来られます。一見何ともないように見えても頭部にけがをしていることが多く、頭蓋骨骨折や網膜剥離(はくり)などを患っていないか慎重に診察します。夜行性の鳥にとって、少しでも視力が悪くなることは命取り。状態が安定したら、屋外の大きなケージで飛行や着地などの運動能力をチェックします。

あらゆる種の野生動物の治療を行うカランビン・ワイルドライフ病院ですが、ワシやタカなどの猛禽類(もうきんるい)のリハビリ施設と訓練には特に定評があります。多い時では一度に8羽のアオバズクのヒナのリハビリを行っていましたが、本来なら親鳥が教えるはずの「生きた獲物を捕る技術」を、人間がヒナに教え込むことは非常に難しいことです。生きた哺乳類や鳥を餌として訓練に用いることは倫理に反するため違法とされていますので、ひもの先にくくり付けた肉類を投げたり空中で振り回したりして、獲物を追う練習をさせます。

ケージという狭い空間での飛行訓練や捕食の練習には限界があります。治療やリハビリのせいで、ケージの中の安全な環境や人間との接触に慣れてしまってもいけません。そのため、自信を持って上手に飛べるようになり、ひもの先に付けられた餌を捕ることができるようになった時点で、保護された場所へ返されることになります。放された鳥がその後しっかりと独り立ちして生きていけているのかどうかは、追跡調査を行わないと分かりません。彼らの独り立ちの準備をしてあげることが、私たちが手伝えることの全てです。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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