カラフルで美しい「ルリミツユビカワセミ」

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第32回 カラフルで美しい「ルリミツユビカワセミ」

秋に入り、カランビン・ワイルドライフ病院では患者となる動物が少なく、とても静かな日々が続いています。これは、気温が下がり始め日照時間が短くなってくると、野生動物たちの活動も鈍くなるため。病院が忙しくないということは、事故に遭ったり病気になったりする動物が少ないということですから、この「静かな季節」は大歓迎です。とはいえ、QLD州の温暖な気候では、鳥や爬虫類、哺乳類にしても、ほとんどの生物が季節に関係無く年間を通して活動していることをご存知でしょうか。

ケージの中のルリミツユビカワセミ
ケージの中のルリミツユビカワセミ

例えば、オーストラリアには10種のカワセミが生息しており、年中その姿を見ることができます。その中の1種「Azure Kingfisher(ルリミツユビカワセミ)」は、その名の通り、瑠璃(るり)の石のようにとても奇麗な青色の羽と、オレンジ色の羽毛のコントラストが美しい鳥です。大きさは、クッカバラの通称でおなじみの「Laughing Kookaburra(ワライカワセミ)」の10分の1ほどで、都市部ではほとんど見かけることがありません。

ある日、民家の窓に衝突してしまい飛べなくなっていたカワセミが保護され、病院に連れて来られました。診察台に置かれた箱のふたをそっと開けてみると、体中の羽を膨らませて目を閉じ、その小さな体を上下させながら大きく呼吸をしている姿が見られました。鳥は体温が下がっている時、膨らませた羽の間に空気をためて体を温めようとするのです。すぐにけがの具合をチェックしたい衝動を抑え、箱から出さずにそのまま保育器に移します。体温が安定し、水分補給や痛み止めで様子を見てから、後日に詳しい検査を実施。すると鎖骨を骨折していたため、痛み止めとケージでの絶対安静が必要となりました。

小さなカワセミにとっては、入院生活での人間との接触が非常に大きなストレスになりやすく、1日2回の投薬以外はできるだけケージを動かしたり近くで物音を立てたりしないよう、細心の注意を払います。ストレスや警戒心から餌を食べないことも多く、病院の庭で捕ってきたミミズを与えてみたり、ケージを木の枝や葉でいっぱいにしてみたりと、入院のストレスを少しでも減らすための工夫をしています。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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