冬の豪雨被害に遭った動物たち

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第34回 冬の豪雨被害に遭った動物たち

6月初め、オーストラリア東海岸は冬には珍しい豪雨に見舞われました。各地で洪水や強風による被害がありましたが、野生動物も例外ではありません。雨がやんだ翌日から、たくさんの動物たちが保護され、病院で治療を受けました。

強風にあおられて巣から落ちたり木や建物に衝突してしまった鳥たちは、脳震盪や翼の骨折などひどいけがを負っていました。川は増水により氾濫し、通常なら淡水に生息しているはずのカメが何匹も海へ流されて砂浜で保護されました。また、木から落ちてずぶ濡れになって地面に横たわっているところを発見されたコアラもいました。きっと暴風雨の中、必死に木にしがみついていて、疲れ果ててしまったのかもしれません。

これまで、車との接触事故に遭ったり、ペットの犬や猫による攻撃を受けたり、また釣り針を飲み込んでしまったりと、私たち人間の生活が原因でけがをしてしまった野生動物の症例をいくつか紹介してきました。しかし、今回の豪雨のような自然現象による被害は、長旅で疲れ果てた渡り鳥や、蛇に食べられそうになってけがをしたカエルなどと同じように、野生に生きる動物にとっては避けられない運命と言えるでしょう。

カランビン野生動物病院での保護動物の治療の様子
カランビン野生動物病院での保護動物の治療の様子

弱い者は生きられない厳しい自然の中で、傷ついた野生動物を私たち人間が保護し治療する意義はどこにあるのでしょうか。苦しんでいる動物を助けたいと思うのは当然、と考える人もいれば、人間が干渉することに疑問を感じたり、自己満足と捉える人もいるかと思います。実際、絶滅が危ぶまれているコアラなどの数種の動物を除いては、個体レベルでの保護は種の保存においては統計学的に重要ではないとされています。

それでも私たちが保護や治療を続けるのは、私たち人間の生活が自然に及ぼしているであろう悪影響に対する、せめてもの償いだからかもしれません。

私が勤めるカランビン野生動物病院(Currumbin Wildlife Hospital)の、施設や治療の様子を無料で見学することができるオープン・デーが7月31日(日)に企画されています。詳しくは病院のウェブサイト(Web: www.savingyourwildlife.org.au)をご覧ください。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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