ペットの猫と野生動物

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第37回 ペットの猫と野生動物

アパート暮らしの我が家の2匹の猫たちは、時々ベランダで日光浴をする他は外へ出る機会がありません。外で自由に遊べないなんてかわいそう、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、他の動物との縄張り争いによるストレスや交通事故の危険など、外の世界はペットにとって良いことばかりとは限らないのです。

また、猫による野生動物への被害も大きな問題です。カランビン野生動物病院では、猫に噛まれたり引っかかれたりしてけがをした野生動物が、毎日のように保護され治療を受けています。病院の受付で、けがをした野生動物を前に「うちの子に限って攻撃なんてするはずがない」と、ペットの猫の関与を否定する飼い主さんは多いです。しかし猫が動くものに興味を持つのは当たり前で、トカゲや鳥、モモンガやポッサムを捕まえて遊んでしまうのは仕方の無いこと。我が家の猫たちも、ベランダにヤモリがやってくるとソワソワして、窓の近くに来るのをひたすら待っています。

ビブ(前掛け)を付けた猫
ビブ(前掛け)を付けた猫

ペットの猫や野生猫による被害で、絶滅してしまったり、絶滅の危機に瀕しているオーストラリア固有の動物は100種以上。ペットの猫が野生猫と交配してその数を増やしてしまうことも問題になっています。このためほとんどの州で猫は個人の敷地の外に出してはいけないと法律で定められており、地域によっては夜10時以降の猫の外出禁止など門限もあるほどです。

民家の庭などでも野生動物を見ることができるのはオーストラリアの魅力ですが、自ら猫の近くにやって来て、その結果けがをしてしまうのは困りもの。外遊びが大好きな猫を屋内だけで生活させることに抵抗がある場合は、猫が野生動物を捕まえにくくする工夫をしましょう。

一番簡単なのは、猫の首輪に鈴を付けること。鈴の音で野生動物は猫の存在に気付くことができます。ただ猫は非常に頭が良く、鈴の音が鳴らないような動き方を覚えてしまうため、複数の鈴を付けるのがお勧めです。最近の研究では、色鮮やかなシュシュのような目立つ首輪も効果的だと分かっています。

また、猫用のビブ(前掛け)も画期的なアイデアです。猫の首輪にビブを付けることで前肢の動きが多少制限され、野生動物を捕まえようとする時に俊敏な動きができなくなります。歩いたり、木に登ったりなどの普段の行動に支障はありません。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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