蛇そっくりの足無しトカゲ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第38回 蛇そっくりの足無しトカゲ

今年も残すところ2カ月あまり。クリスマス休暇を利用した旅行の計画を立てている方も多いことでしょう。広大な土地を有するオーストラリアでは、何時間、時には何日も車を運転して親戚を訪ねたりキャンプや旅行を楽しみます。外で過ごす時間が長ければ長いほど、旅行先や帰り道で傷ついた野生動物に遭遇する可能性も高くなるのです。

「外に停めた車のトランクに蛇がいるから捕まえて欲しい」と、慌てた様子でカランビン野生動物病院にやって来たゴールドコースト在住のある一家。すぐにスタッフが車のトランクからその「蛇」を保護して、私が診察をしました。この生き物、姿形は蛇にそっくりですが、「Excitable delma」という足無しトカゲの1種。軽い脱水症状が見られたもののけがなどは無く、すぐに野生に返して良い状態でした。「一番最後にトランクに入れた荷物に紛れ込んでいた可能性が高いので、どこだったかを思い出してその場所に返してあげてください」とお願いしたのですが、困った顔で「それは無理だ」と言われてしまいました。

保護された足無しトカゲの1種、Excitable delma
保護された足無しトカゲの1種、Excitable delma

実はこの家族、9月のスクール・ホリデーを利用してQLD州北東部のボーエンへ1週間のキャンプに出掛けていました。1,200キロの距離を休憩しながら丸1日かけて車で移動し、やっと帰り着いた自宅でトランクを開けてみると小さな蛇が紛れ込んでいたのです。毒蛇だったら大変、と、すぐにトランクを閉めて、そのまま病院にやってきたとのこと。最後にトランクに荷物を入れたのはキャンプ場だったので、ボーエンからずっと車にいた可能性が高く、何とか元の場所に返してあげなければなりません。

野生動物保護団体などのフェイスブック・ページでボーエンに行く予定のある人がいないか呼びかけたり、保護士さんから別の保護士さんへとブリスベンやサンシャインコーストを転々としてハービー・ベイまで辿り着く方法は見つかったのですが、どうしてもそこから北への手段がありませんでした。ところが、カランビンの野生動物保護施設の爬虫類の飼育係の1人がボーエン近くまで車で旅行する予定があり、彼女の協力で無事、足無しトカゲをキャンプ場へ返すことができました。灯台下暗しとはまさにこのことです。

これまで病院に一番長い距離を旅して来た野生動物は、アデレードで長距離トラックの運転士に保護されてQLD州まで来てしまったトンビですが、幸いこの時も何とか無事に元の場所へ返すことに成功しました。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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