世界最速の動物、ハヤブサ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第43回 世界最速の動物、ハヤブサ

皆さんは「世界最速の動物」とは何かご存知でしょうか? 時速120キロで走るチーターは地上最速の哺乳類ですが、その3倍を上回る速さで飛ぶことができるのが、ハヤブサ(Peregrine falcon)です。獲物に向かって急降下する時の速さは地球上の動物では最速の、時速387キロにも及びます。ちなみに、東北新幹線「はやぶさ」の最高速度は時速320キロです。

猛禽類の一種であるハヤブサはオーストラリア全土に生息しており、ハトやカモメ、ウサギなどを捕まえて食べます。ものすごい速さで急降下して獲物を捕らえるので、少しでも狙いが外れてしまって急ブレーキをかけた時の衝撃は、交通事故のそれをはるかに上回ることでしょう。そのため、ハヤブサが保護される時は大抵、治療不可能なほどの重傷を負っていることが多いのです。

カランビン・ワイルドライフ病院で保護されたハヤブサ
カランビン・ワイルドライフ病院で保護されたハヤブサ

カランビン・ワイルドライフ病院では現在、3羽のハヤブサが療養中です。いずれも、脊椎損傷を負って飛べなくなっていたところを保護されました。そのうちの1羽、オスカーと名付けられたハヤブサは、保護された当初は立ち上がることもできない状態でしたが、数カ月に及ぶ治療を経て、歩いたり短距離の飛行ができるまでに回復しました。これからオスカーが野生に帰るまでには、まだまだたくさんのリハビリと訓練が必要になります。

まず、野生で高速飛行や急上昇急降下を繰り返して鍛えられたハヤブサの筋肉は、保護されて2週間もするとすっかり衰えてしまいます。長い療養生活で失われた筋力と持久力、そして、生きた獲物を捕る技術や「野生のカン」を取り戻すため、オスカーは特別な訓練を受けることになります。

生きた動物を餌として訓練に用いることは動物愛護法で禁止されていますので、肉片をひもにくくり付け、それを投げたり振り回したりして、獲物を追う練習に用います。体力がすっかり衰えてしまったオスカーを野生に返すまでにはまだまだ時間がかかりますが、これまでにカランビンで捕食の訓練を受けた猛禽類たちは全て野生に返すことに成功していますので、オスカーにも期待したいところです。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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