けがをした鳥や動物を見かけたら

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第46回 けがをした鳥や動物を見かけたら

もしも突然、けがをした鳥や動物を見かけたら、皆さんはどうするでしょうか。最寄りの動物病院へ連れて行く、保護団体に連絡する、あるいはカランビン・ワイルドライフ・ホスピタルに連れて来るなどの選択肢があります。オーストラリアに住んでいても、誰しも間近で野生動物に接する機会があるわけではありませんから、傷ついた動物を保護することはきっと特別な体験となるはずです。

先日、脚にけがをして立てなくなっているカラスが保護され、病院に連れて来られました。このカラスを見つけた人は、発見から1週間以上、挽き肉を与えたり、けがをした脚をマッサージしたりして世話をしたのに一向に良くならないため病院に連れて来る決心をしたとのことでした。

診察をしたところ、カラスは痩せ細り、自分の体を翼で支えるのがやっとなほどに弱っていました。大腿骨の開放骨折があり、けがをしてから時間が経っていたため周辺組織は壊死してしまい、神経や血管も傷付き、治療は不可能な状態でした。

人間に懐きやすいカラス
人間に懐きやすいカラス

発見者に電話をして状況を伝えると、カラスなんて珍しくないから治療してもらえないと思い、すぐに病院に連れて来なかった、と言われました。珍しくない動物は治療やリハビリの機会をもらえない、というのは大変な誤解です。カランビン・ワイルドライフ・ホスピタルでは、治療が出来るかどうかはけがや病気の程度で判断されるため、希少種であるとかよく見られる種であるとかは関係ありません。

確かに当院では「ブラック・アンド・ホワイト」は早めに退院させる傾向があります。これはよくある種だから治療に時間をかけたくないという理由ではなく、カラス、マグパイ、モズなどの黒白の鳥はすぐに人間に懐いてしまうため、人と接する時間を出来るだけ短くしなければ野生に返るチャンスを失ってしまうからです。

他にも、ポッサムなど、縄張り争いが厳しい種についても、治療やリハビリで留守をしている間にすみかが奪われてしまうことのないよう、いかに短期間で野生に返せるかが、治療の焦点になります。

もしけがをした鳥や動物を見かけたら、手遅れになるのを防ぐためにも、出来るだけ早く動物病院に連れて行くか、保護団体に連絡してください。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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