フクロモモンガ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第50回 フクロモモンガ

春の暖かい日が続き、カランビン・ワイルドライフ病院には毎日ひっきりなしに野生動物が保護されて来ます。

オーストラリアを代表する動物と言えば、コアラやカンガルーなどが頭に浮かぶことでしょう。おなかにある袋の中で赤ちゃんが成長する有袋類の仲間には、モモンガやポッサムも含まれます。

先日、ペットの猫におもちゃにされてけがを負ったフクロモモンガが病院に連れて来られました。首の辺りの毛が猫のよだれで汚れ、肩には小さなかみ傷も見られました。猫の飼い主さんは自分の猫が他の動物を傷つけてしまったことに大変ショックを受けていましたが、猫が動く物に興味を持つのは当たり前で、庭にやって来る野生動物を捕まえようとしてしまうのは仕方がありません。

状態が安定してから麻酔をかけ、他に傷やあざがないか体毛をかき分けて念入りに調べました。すると、おなかの袋、育児嚢(のう)から小指の先ほどの赤ちゃんの体が半分出ているのが見えました。そうっと袋の皮膚を引っ張って中をのぞいてみると、もう1匹同じ大きさの赤ちゃんがモゾモゾと動いていました。レントゲン撮影や超音波診断の結果、幸いけがの程度は軽く、痛み止めと抗生物質の投与のため数日入院するだけで済みました。

保護されたフクロモモンガの親子
保護されたフクロモモンガの親子

このモモンガの親子は生きて保護され、野生に返すことができましたが、残念なことに、死んでしまってから発見される動物もたくさんいます。有袋類の動物が死んだ状態で発見された場合、その動物が雄か雌かを確認し、雌であれば袋の中をチェックして赤ちゃんがいないかどうか確かめることはとても大切です。

袋の中の赤ちゃんは母親の乳首に吸い付いたまま口が開ききっていないことが多いので、無理に引き離そうとすると口やあごを傷つけてしまう危険があります。そのため、死んだ母親の乳首を切断して赤ちゃんごと袋から出し、乳首を赤ちゃんが飲み込んでしまわないよう安全ピンなどで固定します。動物の死骸を傷つけることに抵抗がある人も多いかと思いますが、もしこのような場面に遭遇してしまったら、地域の野生動物保護団体などに連絡し、指示を仰いでください。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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