コアラはオーストラリアの絶滅危惧種

第52回
コアラはオーストラリアの絶滅危惧種

2017年にカランビン・ワイルドライフ病院で治療を受けた野生動物の数は、9,000を超えました。コアラにおいては、5年前に私が働き始めた当初は年間200頭ほどの症例数だったのが年々増加し、17年には500頭に上りました。

治療を受けたコアラの保護理由は、6割がクラミジア感染症などの病気、2割が車との接触事故や犬に噛まれるなどのけがが要因でした。そして残りの2割は、民家や運動場、道路や工事現場などコアラが生息できない場所で発見されたケースで、食物であるユーカリの木が豊富でより安全な場所への移動が必要となりました。

治療を終えたコアラは個体識別のために耳に赤いタグを付けられ、犬や猫と同じようにマイクロチップが皮下に埋め込まれます。そのため、野生に返された後も、耳のタグやマイクロチップの番号さえ照会することができれば、過去の治療歴やリリースされた場所などが容易に検索できるようになっています。

今年、野生に返されたコアラのうち4頭が、リリース後ひと月と経たないうちに車との接触による重傷を負い、手遅れな状態で再度保護されました。

カランビン・ワイルドライフ病院で保護されたコアラと著者
カランビン・ワイルドライフ病院で保護されたコアラと著者

コアラの入院は長期にわたり、個体に名前が付けられていることから、必然的にスタッフやボランティアも愛着を持って治療に当たることになります。せっかく野生に返すことができたコアラが、またすぐに保護され、安楽死させなければならなかった時のショックは大きいです。

野生に返されてから事故に遭うまでどんな行動を取っていたのか、リリースされた場所が悪かったのかなど、たくさんの疑問が残ります。本来ならGPSを使って、野生に返されたコアラ全ての行動を観察できれば良いのですが、資金不足もあり現在は特定の研究対象のコアラのみに限られています。

カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリーでは、12月26日に「ロストヴァリー」という新しい展示が公開されます。目玉はワオキツネザル、ワタボウシタマリン、レッサーパンダ、カピバラなど、オーストラリアには生息しない動物たちです。外来種を見に来てもらうことにより、改めてオーストラリアの固有種、特に絶滅危惧種であるコアラにたくさんの人が関心を持ってくれることを願います。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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