ヒナを保護したら

第53回
ヒナを保護したら

カランビン野生動物病院では、ここひと月ほどで目立って多かったのが、野生動物が保護されてから数週間あるいは数カ月後に病院に連れて来られたというケースです。一番多いのは、地面に落ちて巣に戻れなくなっているヒナを見つけ、家に連れて帰り、餌を与え、そのまま飼ってしまうことです。初めのうちは順調に育っていたヒナが大きくなるにつれて体に異常が出てきたり、クリスマス・ホリデーが終わって面倒が見きれなくなったという理由で、私たちの元へと連れて来られます。

他にも、けがを負った鳥を見つけたものの、病院へ連れて行ったら安楽死させられてしまうかもしれないから、という理由で家に連れ帰り、小さな籠に入れて餌を与え続け、「元気にはなったけど未だに飛べない」と言って、保護から3カ月後にようやく病院に連れて来られたケースもありました。

これまでにも何度か書いてきましたが、野生動物を州政府の許可なく飼育することは違法です。自然環境保全法(Nature Conservation Act 1992)では、保護された野生動物は72時間以内に動物病院あるいは有資格の野生動物保護士に引き渡さなければならない、と定められています。この72時間とは、QLD州内どんな僻地であったとしても、3日あれば有資格者に引き渡すことが可能という意味ですので、都市部の、特に24時間開業している動物病院が存在する地域では、1日でも1分でも早くそれができるはずなのです。

保護されたガマグチヨタカのヒナ
保護されたガマグチヨタカのヒナ

しかし、法律の問題以前に、必要以上に長い期間を適切なケアを受けられないまま人間の元で過ごしてしまった野生動物を、そこから更に治療や訓練をして野生に戻すことはとても大変で、成功する可能性はごくわずかなのです。

ヒナや赤ちゃんなど成熟していない時期から人が与える餌に依存してしまっている動物は、自分で餌を探す術を知らず、餌をくれる人がいなくなったらもう生きてはいけません。栄養の偏りによってカルシウムやミネラルが不足して骨折や翼の奇形が起きることもあります。

また、骨折した鳥の骨は1週間もするとくっついてしまうため、けがをしてすぐにギブスや手術など適切な処置を行わないと、骨が曲がったまま治ってしまい、そうするとその鳥は一生飛べなかったり立てなくなってしまったりするのです。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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