人獣共通感染症

第55回
人獣共通感染症

毎日たくさんの野生動物の治療をしているカランビン・ワイルドライフ・ホスピタルのスタッフですが、どんなに動物の扱いに慣れていても、噛まれたり引っかかれたりしてけがをしてしまうことがあります。

動物の種類や気性によって、保定(動物を治療する際に、動かないように抑えておくこと)の仕方や使う道具を変えるなど十分な注意をして行うため、けがのほとんどは軽く済みますが、やはり気を付けなくてはならないのが人獣共通感染症です。

これは動物から人間に、または人間から動物に感染する可能性がある病気の総称で、例えば白癬(はくせん)などに感染したペットの犬や猫から飼い主に病気がうつってしまう可能性があります。

私たちが最も注意しているのがコウモリから感染する可能性があるリッサ・ウイルスです。狂犬病に似たウイルスで、人間が感染してしまうと死に至ります。コウモリの治療は狂犬病の予防接種を受けているスタッフのみが、厚手の手袋をし、コウモリに麻酔をかけてから行います。

ペットの鳥たちと遊ぶ動物看護士。しかし動物との触れ合いには危険も潜んでいる
ペットの鳥たちと遊ぶ動物看護士。しかし動物との触れ合いには危険も潜んでいる

鳥から感染することがあるオウム病も、免疫力が低い人が感染した場合はとても危険です。症状が風邪によく似ているため、オウム病と気付かないうちに悪化して肺炎に掛かることもあります。

他にも、爬虫類(はちゅうるい)が持つサルモネラ菌、家畜から感染する「Q熱」など、数え切れません。

これら人獣共通感染症は、その動物に病気の症状が表れていなくても感染する可能性があるため、日ごろから予防策を取らなければなりません。

必要以上に野生動物に触らないこと、キスなどをしないこと、そして触った後は必ず手を洗うことです。私たち病院スタッフは1日に何十回も手を洗っています。

野生でもペットでも、動物から人間に感染する病気があるということを覚えておき、動物と触れ合った後に体調を崩した場合は医師にその旨を伝え、治療を受けてくださいね。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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