外来種の駆除と在来種の保全

第60回
外来種の駆除と在来種の保全

オーストラリアに入国する際、空港での検疫がとても厳しいことは皆さんも経験しているはずです。オーストラリア固有の動物や植物を、害獣や害虫から守るために必要なことなのですが、既に国内にすみ着いてしまっている外来種はどうすべきでしょうか。

イギリスによる植民地支配が本格化した200年前から、家畜となる豚やヤギ、ペットの猫、狩猟用のキツネやウサギ、荷馬車や農耕のための馬など、たくさんの動物が移入されてきました。これにより、数々の固有種が絶滅の危機にさらされることになりました。

家畜を襲う野犬やキツネ、農作物を食べ荒らす野ウサギや鹿、在来種の生存を脅かすヒキガエルや害鳥などは、全て駆除の対象となっています。駆除の方法は主に、毒入りの餌を撒(ま)くか、罠を仕掛けるのですが、生息地を共有する野生動物が被害に遭ってしまうこともあります。

トラップによるけがの治療を受けるバンディクート
トラップによるけがの治療を受けるバンディクート

野良猫トラップ(箱罠)の金網に挟まって身動きが取れなくなっていたバンディクート(Northern Brown Bandicoot)が、トラップごと運ばれてきました。中に仕掛けられていた餌を取ろうと網目をくぐろうとしたものの、腰が引っ掛かってしまったのです。すぐに麻酔で眠らせ、皮膚に深く食い込んでいた金網をボルト・カッターを使って切断しました。

このバンディクートは衰弱していたものの、幸い骨や臓器は無事でしたが、胴回りと後ろ足の皮膚を深く損傷してしまい、鎮痛剤と抗生物質の投与、そして2日おきのガーゼ交換が必要となりました。保護から1週間経った今では状態は落ち着いていますが、長期の入院となりそうです。

時期を同じくして、片バネ式のキツネ用罠に足を挟まれてしまったコアラも保護されました。害獣の駆除は在来種の保全のためオーストラリア政府により奨励されており、今後も続けられますが、罠や毒餌では対象の特定ができないのが難点です。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっている他、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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