ゴールドコーストのジャック

第61回
ゴールドコーストのジャック

カランビン・ワイルドライフ病院では、8月の1カ月間だけで700を超える動物が治療を受けました。そのうちコアラは61頭でした。コアラの繁殖期は例年8月ごろに始まり、夕方から早朝にかけて活発に行動するため、移動中に車にひかれたり、犬に噛まれてしまったコアラがたくさん保護されてきます。しかし、先月保護されたコアラの多くは、主食とするユーカリの木が全くない場所で発見された、2歳くらいの若いコアラたちでした。

ゴールドコーストは、ゴルフ場や公園などに点在する木々にも野生動物は生息しています。狭い緑地では食糧が限られてしまうため、動物たちは食べ物を求めて移動することが多くなるのです。

ゴールドコースト大学病院前の交差点で保護され、ジャックと名付けられた推定2歳のオスのコアラも、ユーカリの木や繁殖相手を探しているうちにどこへ行ったら良いか分からなくなってしまったのでしょうか。信号機の支柱にしがみ付いているところを発見され、ワイルドケア(Wildcare Australia. Inc.)から救助ボランティアが派遣されました。

ゴールドコーストの街中で保護されたコアラ、ジャック(写真提供=Wildcare Australia Inc.)
ゴールドコーストの街中で保護されたコアラ、ジャック(写真提供=Wildcare Australia Inc.)

通常であれば10メートル程の高さにいるコアラの捕獲に慣れている救助ボランティアたちも、車や路面電車が行き交う道路での救助活動には危険が伴うこともあり、鉄道会社G:linkのスタッフの協力も得て、路面電車の発着のタイミングを見ながら、捕獲作業が行われました。

高い所にいるコアラの捕獲には、長い棒の先に旗のような布を付けた道具を使います。その布をコアラの頭の上に掲げると、コアラは嫌がり逃げようとして必然的に下に降りてくるのです。そして、ある程度低い所まで降りてきたタイミングで毛布などを被せて直接捕獲します。途中で他の木にジャンプして移動することもありますが、周りに飛び移る物が何もなかったジャックはそのまま無事に捕獲されました。

病院で検査を受け、けがも病気もなく健康であると分かったジャックですが、何しろ保護された場所の近辺には安全かつユーカリが豊富なコアラ生息地がないので、現在クイーンズランド環境省がリリースに最適な場所を検討中です。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっている他、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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