リリース後の追跡調査

第70回
リリース後の追跡調査

毎年寒くなってくる6月と7月は、保護されカランビン・ワイルドライフ病院(Currumbin Wildlife Hospital)で治療を受ける動物の数は少なくなります。

私たちは、保護された野生動物のけがや病気を治療し、野生に返すという活動をしています。2018年の1年間に当院で治療を受けた動物は1万以上、その内の約4割がリリースに至っています。治療を終えた動物を野生に返すことはとてもやりがいがあることですが、見送る時はいつも一抹の不安を抱えています。私たちには動物のけがを治すことはできても、けがをしてしまった原因を取り除けてはいないからです。リリースされたら私たちの仕事はそこで終わり。後遺症があったり、またすぐに危険に晒されてしまったとしても、それを知る手段がないのが現状です。

発信機を取り付けられるオブシディアン(写真提供:グリフィス大学ヴィッキー・トムソン、ダリル・ジョーンズ)
発信機を取り付けられるオブシディアン(写真提供:グリフィス大学ヴィッキー・トムソン、ダリル・ジョーンズ)
オブシディアンのリリース後の移動軌跡(写真提供:グリフィス大学ヴィッキー・トムソン、ダリル・ジョーンズ)
オブシディアンのリリース後の移動軌跡(写真提供:グリフィス大学ヴィッキー・トムソン、ダリル・ジョーンズ)

保護されたコアラは個体識別のためにマイクロチップの埋め込みと耳標の取り付けが許可されています。また、水鳥、渡り鳥、コウモリなどに個体識別番号の付いた足環を取り付ける機関もあります。これらはその動物が次に発見された時に、記録を辿ってその個体がそれまでどこで発見され、どのくらいの距離を移動したかを調べるためのもので、日々の個体の動きを追えるわけではありません。

法による制限と資金不足から、リリースされた動物の追跡調査をするには大学などの研究機関からの申請が必要です。

昨年末、シロハラウミワシ(White bellied sea eagle)の幼鳥が保護されました。オブシディアンと名付けられたこの鳥は、体力の回復と筋肉の発達を待ち、3カ月後に追跡調査のため小型の発信機を取り付けられリリースされることとなりました。グリフィス大学の研究チームが主体となり、発信機から30分毎に電波を傍受してオブシディアンの位置を知ることができます。リリースされたオブシディアンは初め2日間はあまり移動せずに様子を伺っているようでしたが、その後長距離の移動を繰り返し、現在はリリース地から60キロメートル離れた所で確認されています。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっている他、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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