【新連載】オージー・ワイルドライフ診療日記

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第1回 コアラのキーリー


オーストラリアにはこの国にしか生存していない野生動物がたくさんいます。中でも代表的なのが、大きな耳と鼻を持つコアラです。

動物園では一見おとなしそうに見えるコアラですが、夜になると行動が活発になり、ユーカリの木と木の間をジャンプしたり、時速10キロの速さで地面を走ったりします。

コアラのキーリー(Keeley、救助した人の名前が付けられました)は、ゴールドコースト郊外にある家の裏庭で、2頭の犬に噛まれているところを発見されました。ワイルドケア・オーストラリアのカレンさんが救助に向かうと、キーリーは重傷を負っていたにもかかわらず、必死で木に登ろうとしていたそうです。

病院に着いたキーリーはぐったりとしていましたが、その目は常に病院スタッフの動向を追っていて、見慣れない環境に戸惑っているようでした。ケージから出してみると、口と鼻から血が出ていて、右前脚が不自然に曲がっていました。

すぐに痛み止めの点滴を始め、触診、採血、レントゲン診断、超音波画像診断などの検査が行われました。検査の結果キーリーの右前脚は骨折していましたが、幸い出血量も少なく、内臓にも異常は見られませんでした。キーリーは手術を受け、また木に登れるようになるまで長期入院することになりました。現在もリハビリを続けていますが、野生に戻れる日はそう遠くないはずです。

コアラの繁殖期は例年8月から4月ごろと言われており、この時期は夕方から早朝にかけてコアラの行動が活発になります。コアラが生息しているユーカリの木が敷地内にあるご家庭では、コアラが入って来られないようにフェンスを建てるか、夜間は飼い犬を家から出さないなど、皆さんの協力が不可欠です。また、運転中に黄色いコアラの道路標識を見かけたら、運転速度に注意してください。

QLD州ではコアラは危急種と分類されていて、その数の減少が危ぶまれています。いつまでも野生のコアラが見られるよう、私たちができることを考えていきたいですね。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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