亀のオリビアとその赤ちゃん

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第5回 亀のオリビアとその赤ちゃん

野生動物の患者たちはクリスマスもお正月もおかまいなしにやって来るものですが、カランビンでは嬉しいことがありました。

カランビン・ワイルドライフ・ホスピタルには、鳥やトカゲなどの卵を一定の温度に保ち人工孵化(ふか)させるための孵卵器があります。病院に持ち込まれる卵のほとんどが住宅地の庭や道路脇で見つけられたものですが、ケガの治療のために入院している野生動物の卵の人工孵化を試みることもあります。


コウヒロナガクビガメ(Broad Shelled River Turtle)のオリビアは、車にひかれて背甲と腹甲のどちらも骨折してしまうというひどいケガを負いました。ほかにケガをした部位がないか調べるためレントゲンを撮ったところ、なんと妊娠していることが分かりました。きっと、産卵に適した場所を探している最中に事故に遭ってしまったのでしょう。

甲羅の骨折以外にケガはなく、割れた甲羅はボート補修用のエポキシ樹脂と外科用の針金で固定し、長い入院生活が始まりました。いつ産卵してもいいよう、水槽には砂場が用意され準備も万端。間もなく16個の卵を産みました。

孵化までの間、卵は人工孵卵(ふらん)器に移し、それからは週に1回、ボランティアが卵に照明を当てて様子をチェック。約2カ月半の間、成長を見守り続けました。


そしてついに元旦、その卵が孵(かえ)ったのです。前日に卵にヒビが入っているのが確認されていましたが、手のひらよりも小さい赤ちゃん亀が孵卵器の中で動いていました。孵卵器から出して小さな水槽にそっと移したところ、すぐに泳ぎ、元気にエサを食べる様子が見られました。

オリビアはあと数週間は入院が必要ですが、赤ちゃん亀たちは産まれて1週間もすると、オリビアが救助された場所の近くにある水路に放されます。

昨年病院で治療を受けた患者の総数は前年を上回って8,568匹、そのうち車にひかれた動物は約1割にも及びました。野生動物は私たちにとってごく身近な存在であるということを忘れず、安全運転を心がけたいですね。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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