アマガエルの運命

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第10回 アマガエルの運命

オーストラリアの野生動物には草食動物もいますが、肉食の鳥類や爬虫類もいるため、食べたり食べられたりということが日常的に行われています。もし、動物が動物を食べている現場を目の当たりにしたら、皆さんはどうしますか。

病院に、足にケガを負ったアマガエル(Green Tree Frog)が連れてこられました。ミドリ・ニシキヘビ(Green Tree Snake)に今まさに食べられそうになっていたところを“救出”されてきたのです。病院への電話で、「ネズミが鷹に襲われている、どうしたらいいか」といった問い合わせがあります。私たちは「鷹も生きるために食べなくてはいけないので放っておいてあげてください」と伝えます。

野生動物を治療するという行為は、自然の摂理に干渉することでもあります。せっかく捕まえたはずのエサを取り上げられてしまったヘビは、次の獲物を探していることでしょう。では、九死に一生を得たアマガエルはどうでしょうか。食べられてしまうはずだった命、ケガが治って野生に戻ってもすぐにまた食べられてしまうかもしれません。

私たちは、病院に患者として来た動物を、区別なく治療することにしました。後ろ脚に裂傷があったので、麻酔をかけ縫合しました。傷が完治するまで2週間ほど保護士さんの元で過ごした後、発見された場所に返されました。

ケガも病気もしていないアマガエルが病院に来るケースもあります。スーパーマーケットで買ったサラダの袋を開けたら小さなアマガエルが入っていたとか、病院に入院中の動物のために注文したバナナやレタスに紛れていたということが稀にあります。低体温や脱水症状が見られることもありますが、たいていは元気です。このように食材に紛れて移動してきたカエルには、帰るところがありません。食材の原産地などを調べても、流通のどの行程でカエルが入ってしまったのかを探し当てることはほぼ不可能です。こうしたカエルたちは、州政府の許可を得て自然保護区や動物園で余生を送ることになります。

私たち人間の行いによって、いとも簡単に運命を変えられてしまった動物たち。どうしたら野生動物への影響を最小限に留められるか考えていきたいですね。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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