無くならない、鳥の衝突事故の原因は?

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第12回 後を絶たない鳥の衝突事故

毎日ふと空を見上げると、必ずと言っていいほど鳥が空高く飛んでいる様子が見られます。遠くからは悠々と飛んでいるように見えますが、その飛行速度はとても速く、ほとんどが時速30キロメートル以上、多くは時速100キロメートルを超えたスピードで飛んでいます。

ある日、病院の窓ガラスに何かがぶつかった大きな音がしました。外に出てみると、ズグロミツスイ(Noisy miner)が窓の外で意識を失っていました。すぐに保温、点滴、痛み止めや抗炎症剤の投与などの治療を施しましたが、ひどく頭を打っていたようで、その日はずっと目を閉じたままぐったりとしていて回復が危ぶまれました。次の朝様子を見に行くと、止まり木に立って目をぱっちり開けて、まるで「早く出してよ」とでも言わんばかりにバタバタと羽を動かし始めました。ケージから出すと、すぐに病院のロビーを飛び回っていましたが、飛行をうまくコントロールすることができず、左寄りに偏って旋回していました。このまま野生に返してもうまく餌を捕ることができないので、その後3日間病院で治療を続け、うまく飛べるようになってから病院の外に放されました。

窓にぶつかって怪我を負い病院に連れて来られる鳥は後を絶ちません。このミツスイのように脳しんとうを起こしたり、クチバシや肩周りの骨を骨折したり、ぶつかった衝撃で即死したりする鳥もいます。

視覚は鳥にとってとても重要な知覚です。近年の鳥の飛行についての研究では、鳥は常に前方を見て飛んでいるわけではなく、頭を下に向けて着地点を見ていたり、片眼で横方向を見ていたりすることが分かっています。飛行中にちょっとよそ見をしていて建物にぶつかってしまったり、透明なガラスに気付かずにその先を目指して飛んでいて激突してしまったりするんですね。空港の滑走路でのバード・ストライクも同じ種類の事故と言えます。音を使って警告したり、色や柄の目立つカーテンやポスターを使うなどの対策はとられていますが、残念ながらまだまだ鳥の衝突事故は減っていません。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る