野生動物に食べ物を与えるということ

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第14回 野生動物に食べ物を与えるということ

Currumbin Wildlife Hospital(カランビン野生動物病院)では、近隣の住民や動物病院からの質問や相談に応じています。中でもよく質問されるのは「野生動物に食べ物を与えてもいいの?」というものです。ベランダや庭にやってくる鳥やポッサム、またカンガルーなどに餌をあげたいという人は多いです。その気持ちは良く分かるのですが、答えは「NO」です。これにはいくつもの理由があります。

まず、犬や猫を飼っている家で野生動物の餌付けをすると、必然的に野生動物とペットが接触する機会が多くなり、どうしてもペットの遊びの対象となってしまったり、犬や猫が近くにいることに慣れてしまい、ほかの場所でも安易にペットに近づいてケガをしてしまいます。また、人から餌をもらうことを覚えてしまった動物、特に頭の良いカラスなどは、餌付け用の餌だけでなく、人の食べ物やゴミを漁って食べたり、それを防ごうとする人に対して攻撃的になったりします。ヒナや赤ちゃんなど成熟していない時期から人が与える餌に依存してしまっている動物は、自分で餌を探す術を知らず、餌をくれる人がいなくなったらもう生きてはいけません。

そして、餌付けによる一番の問題は、栄養の偏りです。野生動物は主食が何であれ、毎日たくさんの種類の物を食べています。挽肉で作ったミートボールを食べているカラスやマグパイ、パンをもらって食べているコクチョウはカルシウムやミネラルが不足して骨や翼の形成異常が起こります。また、ドライ・フードばかり食べているカンガルーは顎放線菌症という顎の骨の病気で何も食べられなくなります。善意ある行いがもたらした野生動物の病気を目の当たりにすることはとても悲しいです。

ただ、餌付けをすることで野生動物との繋がりや自然保護の大切さを広めることができるのも事実です。そのため、もし餌付けをするなら、毎日ではなく不定期に少量の餌を安全な場所に出してあげましょう。病院でのロリキートやカンガルーの餌付けは、時間と配布する餌の量を制限し、動物たちに影響が無い範囲で続けられています。私がお勧めしたいのは、バンクシアやブラシノキなどオーストラリア原産の木を庭に植えることです。きっと鳥やポッサムがその花実を食べに来ますよ。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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