保護される赤ちゃんコアラたち

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第16回 保護される赤ちゃんコアラたち

毎年300頭ほどの野生のコアラがケガや病気のために保護されカランビン・ワイルドライフ・ホスピタルで治療を受けますが、2014年12月初めの1週間だけで大人のコアラが10頭、加えてコアラの赤ちゃんが3頭保護されるという事態がおきました。

生まれたばかりのコアラの赤ちゃんの体長は約2センチほど、最初の半年間はお母さんのお腹にある袋(育児嚢(のう))でミルクを飲んで育ち、その後ようやく袋から出ても1歳になるまではお母さんと一緒に過ごします。今回保護された3頭は体重が1キロ前後で生後約9カ月、まだまだお母さんコアラが必要な時期です。

1頭目はユーカリの木の下で赤ちゃん単独でじっとしているところを発見されましたが、しばらくすると木の上から降りて来たお母さんがコアラの赤ちゃんを背中に乗せて再び登っていったため、その日は保護士さんたちと様子を見ることにしました。ところが翌朝、再び赤ちゃんコアラだけが同じ木の下に。ケガをした様子はありませんでしたが、外見だけではケガも病気も見つかりにくいのがコアラなので、まず保護し病院で検査。その結果、軽い脱水症状を起こしているほかは異常が見られませんでした。コアラの育児放棄は母子どちらかの異常が原因です。お母さんはなぜ赤ちゃんを見放したのでしょう。

周辺の木の観察を続けていた保護士さんたちは間もなくお母さんコアラを発見し、木登りの専門家の助けを借りて、お母さんを保護し検査することに成功しました。クラミジアという病気に感染し膀胱炎を患っていることが分かったため治療を始め、お母さんの症状が安定した今では親子で片時も離れず過ごしています。

2頭目の赤ちゃんは大型犬に噛まれてひどい出血があり、応急処置と輸血をした後にスタッフが24時間常勤する「Australia Zoo」の野生動物病院へ搬送され、3頭目の赤ちゃんは、お母さんコアラが腎不全で亡くなってしまったため保護士さんの元で育てられることになりました。

森林伐採や病気・ケガなどでどんどん減少しているコアラの数。この3頭の赤ちゃんコアラたちが無事に育ったときに、安全で食料の豊富な繁殖しやすい環境を用意してあげられなければなりませんね。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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