疲れきった渡り鳥たち

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第17回 疲れ切った渡り鳥たち

例年、11〜1月にかけての夏の嵐の時期になると、ほかの季節には見られない種の鳥がたくさん保護されます。渡り鳥であるミズナギドリ科(Shearwaters)の鳥たちもその一部です。年に一度の繁殖期以外は陸に上がることはなく、長い期間を渡りの飛行と水中での捕食に費やします。オーストラリア東海岸でこの時期によく見られる種のミズナギドリは、南はタスマニアから北はシベリアやアラスカまで、太平洋を8の字に移動します。距離にして14,000キロを超える、とても長い渡りの旅です。

2年前のオーストラリア・デーの前後、東海岸は暴風雨に見舞われ、特にQLD州は洪水や土砂崩れなどの被害に遭いました。私のいるカランビン・ワイルドライフ・ホスピタルでも、浸水や停電により医療機器のトラブルがあったほどです。そんな中、強風に煽られ飛べなくなった多数の渡り鳥たちが衰弱した状態で砂浜に打ち上げられ、保護のため病院で受け入れたミズナギドリの数は3日間で300羽にものぼりました。

保護された鳥たちのほとんどが、長旅の疲労、何日もの絶食、そして冷たい風雨にさらされて痩せ細り、もはや死の一歩手前。残念ながら私たちにできることはほんのわずかです。そしてこれも自然現象ですので、人間がどこまで干渉すべきかというジレンマもあります。

まずは1羽1羽の状態を確認し、渡りの時期を逃さずに短期間のリハビリだけで自然に帰せる可能性のある鳥のみが治療の対象となります。魚を丸ごと飲み込む元気がない鳥にはブレンダーにかけた魚をチューブで胃に直接流しこんだり、疲労で羽毛の防水性を失った鳥には霧吹きで水をかけて羽づくろいを促したりと、スタッフとボランティアが総出でリハビリに取り組みましたが、最終的に野生に帰すことができたのは全体の1割にも及びませんでした。

治療不可能とされた鳥たちの死後解剖の記録によると、驚いたことに、その9割が胃の中にビニールやプラスチックの破片が含まれていました。例年よりも多くの渡り鳥が保護されることになったのはそれが原因ではないかとも考えられています。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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