ニシキヘビのお腹から

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第19回 ニシキヘビのお腹から


オーストラリア沿岸部に広く生息している、カーペット・ニシキヘビ(Carpet Python)。その名から連想されるように、全身が緑や茶褐色のきれいなひし形の模様で覆われています。「Currumbin Wildlife Hospital」で治療を受けるヘビの中で最も多い種です。

成長すると2メートルを超えるニシキヘビは、主に小型の哺乳類や鳥、トカゲなどを餌とします。毒は持たず、獲物を見つけるとその長い身体を力いっぱい巻き付けて窒息させてから丸のみにします。また、獲物が小さい場合は驚くほどの速さで近づいて、一気にのみ込んでしまいます。食べた餌は1週間ほどかけて消化されるため、食後はあまり動かずにじっとしています。

実は「ほとんど身動きを取らず、体が異様に腫れている」と、家屋や庭で見つけたニシキヘビを保護して病院に連れて来る人が後を絶ちません。産卵前やケガ、腫瘍による腫れの場合ももちろんありますが、多くの場合はじっとして獲物の消化にエネルギーを集中させているヘビで、治療は一切必要ありません。ですが、消化中に捕獲されたり移動させられたりするとそのストレスからせっかく食べた獲物を吐き戻してしまうことがあるため、餌が消化されるまで病院のケージで入院してから野生に返されます。


ボールを誤飲したニシキヘビのレントゲン写真

食べた餌を全て消化できれば良いのですが、治療が必要になるケースもあります。小型犬を丸のみしてしまって消化も吐き戻すこともできず窒息しそうになっていたり、コウモリを食べたものの翼が体内で引っかかって排泄できずにいたり、鳥の卵とゴルフ・ボールを間違えてのみ込んでしまったヘビも。開腹手術で助かるケースがほとんどですが、小型犬を食べてしまったヘビは圧迫による臓器へのダメージがひどく、命を落としてしまいました。

お腹が膨らんでじっとしているヘビを見つけたら、まずはそっと見守るのが一番です。餌を消化中のヘビは動きが鈍く、ペットの犬や猫に遭遇してもすぐに逃げることができないので、ペットが近づかないようにしてあげると良いでしょう。もし膨らみが身体の幅の倍以上もあったり、何日経っても動く気配がない場合には、レスキューを依頼してください。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る