嫌われ者のアイビス

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第21回 嫌われ者のアイビス

オーストラリア東部全域、北沿岸部と南西部の広範囲に生息している、オーストラリアン・ホワイト・アイビス(Australian White Ibis)。トキの仲間ですが、絶滅してしまった日本のトキとは違い、住宅街、公園、学校など、街中のいたる所で目にすることができます。

真っ白な体に黒い頭と尾羽というコントラスト、そして長いクチバシが特徴です。成鳥の体長は70センチほどで、その大きな翼を広げると、裏側の皮膚はとてもきれいな赤色をしています。

草原や沼が豊富だったころは主に虫や甲殻類を食べて生きてきましたが、干ばつの影響で徐々に沿岸部へ生息地を移し、近年ではゴミ箱などから人間の食料の食べ残しを漁って食べるという、都会で生きていく知恵を身に付けています。中には、カフェや公園で食事を楽しんでいる人のご飯を横取りしようとする図々しいアイビスもいます。


どこの都市でも見かけるアイビス

都市化に上手く順応して生きているアイビスですが、そのたくましさが災いして、オーストラリア東部の大都市では害鳥として駆除の対象になってしまっている地域もあります。住宅街ではゴミ袋を漁って道路に生ゴミを散らかしたり、観光地では食べ物を盗もうとして観光客を驚かせてしまうなど、すっかり嫌われ者となってしまいました。

カランビン・ワイルドライフ・ホスピタルにも、アイビスが家のゴミを荒らして迷惑しているので何とかできないか、という相談の電話がよくかかってきます。しかし、オーストラリアの在来種は動物愛護法や自然環境保全法などで守られているため、どんなに数が豊富で人の生活に害を及ぼしたとしても、その動物に危害を加えてはなりません。私たちにできることは、ゴミはゴミ箱に捨て、ゴミ箱は蓋が開けられない場所に保管するか、収集車が来る直前までカギをかけておく、という本当に基本的なことだけです。

アイビスの巣は高い木の上に作られ、移動する時は空高く飛んでいるため、私たち人間の近くに来るのは食料を探している時だけです。従って、人間に対して攻撃的になることはまずありません。人が近づいても逃げる様子もなく、飄々と歩いている姿を見かけると、本当にたくましく生きているな、と思わず感心してしまいます。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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