在留子女の母国語教育(4)

QLD日本語補習授業校の窓辺から

「教えて、校長先生!」

第4回 在留子女の母国語教育(4)

今回は、親子の日本語会話がほとんどなされていない場合について考えてみましょう。

さまざまな事情で親子の会話から日本語が消えている家庭は少なくありません。特に、国際結婚家庭の子どもの中には、4年生ぐらいから日本語を勉強しなければならないことへの嫌悪感を示すケースが出てきます。永住者の多いゴールドコーストの補習校でも今春、4年生になる時に退学した児童がかなりいました。

日本人のお母さんが日本語で話しかけても子どもが英語で答えることは珍しくありません。しかし、お母さんは日本語を貫き通すという強い信念を持つことが大切だと思います。

英語圏で生活する以上、英語を話し、英語で思考し、英語で人格形成していくのですから、子どもにとって英語が最重要言語であることは言うまでもありませんが、いったん諦めてしまうと元に戻すことは容易ではありません。私たちの補習校でも後で復学する途中退学者はごくわずかです。

世界には大人になってから「母の言葉を大切にしておけばよかった」と後悔している補習校退学者が大勢います。一方、辛くとも自分なりに工夫して補習校を続けている在校生も大勢います。

確かに、大きくなってからでも「新日本語の基礎」や「みんなの日本語」のような有名な教材を用いて外国語としての日本語を学習する道もあるでしょう。私もかつてベルギーとスイスから来た高校留学生にこのテキストのローマ字版を使って日本語を教えたことがあります。彼らは1年で流暢に話せるようになりましたが、補習校の子どものバイリンガルとは質が違います。補習校の子どもたちは同年代の子どもと交わり、教科指導のみならず学習指導要領に基づく日本人にふさわしい学校教育を経験しながら学年ごとの成長過程を辿ります。

大人になってから覚えた言語はアルツハイマーになると残らない、とある人から先日聞きました。真偽のほどはともかく、子ども時代から諦めずに続けることは必ずや宝になるでしょう。


丸山吉信
■プロフィル

日本で大学院修了後、小学校、中学校、高等学校で合計30年間に渡り、帰国子女教育、国際教育に従事。2012年3月文部科学省派遣教員として来豪。現在、在外教育施設クイーンズランド補習授業校ブリスベン校およびゴールドコースト校校長。

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