逆境を乗り越えたから今がある「Osawa Enterprises代表 大沢紀三夫さん」

人の個性や生き方、人生観、価値観、夢などによって形成されるライフスタイルのほか、街のスタイル、ファッション・スタイル、食のスタイル…など、世の中にはさまざまなスタイルがある。オーストラリアで見つけた“ほっと”なスタイルを紹介する。

 

逆境を乗り越えたから今がある

Osawa Enterprises代表 大沢紀三夫さん

牛肉や豚肉など種類豊富な肉の販売を行う「Osawa Enterprise」代表の大沢紀三夫さん。大沢さんは、オーストラリアでWAGYUの知名度が低かったころに、WAGYUビジネスにいち早く目をつけ販売を開始した。今では15年の販売実績を誇り「れんが家」や「すみの家」などをはじめとする複数の焼肉レストランを顧客に持つ。その温かく誠実な人柄で顧客からの信頼も厚い大沢さんだが、成功までの道のりは決して順風満帆ではなかったという。

 

――海外に出ようと思ったきっかけは何でしたか?
 週末になるとよく日本中の市場に行って野菜を見て回っていました。海外からの野菜への依存度を見て、ビジネス・チャンスは日本国外にあると思いました。それが海外に出た一番のきっかけです。また日本で通っていた英会話スクールに、私の前妻が先生として勤めていて、彼女がオーストラリア人だったというのが、オーストラリアへ来たきっかけですね。

 

――なぜ英会話を始めようと思ったのでしょうか。
 昔、山道をドライブしていた時にイギリス人のヒッチハイカーを乗せたんです。日光から中禅寺湖まで1時間くらい乗せたのですが、私はその時英語ができず苦痛でした。英語が話せないとこんな苦痛な思いをするんだ、と思って英会話スクールに通い始めたんです。それからはずっと英会話漬けでしたね。土日は図書館に通って受験勉強をしている学生の横で朝から閉館まで缶詰状態で勉強していました。

 

――日本では何をされていたのですか。
 群馬県の農協で5年間畜産の部門で働いていました。畜産の勉強をしつつ現場での仕事もしていたので畜産の経営イロハはひと通りそこで学びました。そのころは畜産が自分の天職だと思ったことは一度もなかったし、次の仕事のためのステップだと思っていました。しかし、かつてスティーブ・ジョブズがスピーチの中で「点と点がつながって線になる」と言っていたように、当時は分からなかったけれど、今考えると農協の畜産部門で働いていたことも今につながっているんですよね。

 

――オーストラリアに来てからはどんな仕事に就かれたのですか?
 初めは貿易関係について学ぼうと思い日系の貿易会社に入りました。しかし義理の兄から和牛ビジネスをやってみないかと勧められたんです。当時、畜産業は競争相手もいなかったのでビジネス・チャンスがあると思いました。それに、今まで畜産業をやってきたし、畜産業で生きていくことが一番の選択であると思ったのです。ただその時、畜産の経営知識はあったものの、肉をさばく技術はなかったので知り合いに頼んで、ひと通りの技術を学ばせてもらうために日本に戻って肉工場で半年間修行をすることにしました。

 

――修行を終えて意気揚々とオーストラリアに戻ってきたのですね。
 日本で半年間修行を行い、「これから商売を頑張るぞ」と思って戻ってきたら、オーストラリア人の妻に離婚を求められました。何をしたわけでもなく、いきなり「離婚したい」と言われたので、その時は本当に衝撃を受けました。離婚後に1人で住んだ家は、2階にオーナーの家族が住んでいて、1階に自分が住むという一軒家でした。2階で家族がテレビを見ながら家族団欒の時を楽しく過ごしていて、それが下まで聞こえるんですよ。仕事を始める前で、かつ離婚直後だったので、話し相手もいないし本当に辛かったですね。孤独から逃げたくて外に出てみてもお金がないし、公園でぼーっとしたりしていました。今は笑い話になるけれど、当時は経験もないし、お金もないし、頼る人もいない。商売は始めたばかりで右も左も分からない。全く先が見えない状態だったんです。だから自分の中では「この商売を成功させるしかない。やれるだけやってみよう」と思ってこれまでひたすら突き進んできました。家族のありがたみを十分に味わった日々があったからこそ、今があるのだと思いますね。

 

――波乱万丈な日々を過ごした大沢さんですが、お店のスタッフ育成にも力を入れているようですね。
 今までさまざまな辛い思いを経験したからこそ、私がその辛い経験をしたころの年と同世代のスタッフへは見る目も変わってきます。たくさん失敗はしているけど、こんなことを考えているんだろうな、こんな経験をしているんだろうなと同じ目線で物事が分かるんです。自分の仕事を分担して自分の手足となってやってくれているから、やっている人の立場に立って物事が言えるんです。スタッフに接する時も、「相手を信頼している」という姿勢が伝わらないと、動いてくれないです。いくら口で理想論だけを並べても部下はついて来ないんです。だから、私はスタッフに「お客さまとどう信頼関係を結ぶかを考えなさい」といつも言っています。スタッフは売り上げなどは気にせず、とにかくお客さまとの信頼関係を大切にして欲しい。信頼関係があればちょっとミスをしてしまっても、その関係は簡単には崩れないですからね。

 

――お客さまとの信頼関係が何より大切ということですね。


倉庫で働くスタッフとともに

 そうですね。うちのスタッフはこれからの将来を担っていく若い人たちが多いんです。だから彼らに「人と人との関わりを大切にする」という考えを持ってもらいたい。今までこうしてきたんだからこれでいいのだ、という考えを押し付けるのではなく、今の若い人たちの考えと、自分の今までの経験を照らし合わせて、それを今後どう生かしていくか、ということを考えています。基本的なことは言いますが、それ以上は彼らに考えてもらいます。それでもやはりいちばん大事なことは、お客さまとの信頼関係だから、そこに一番重点を置くよう指導はします。
 目先の利益のことを考えずに信頼関係を築くことで、それがいずれは自分の元に返ってくるし、自分自身も成長すると思うのです。場数の分だけ失敗するけれど成長もします。失敗しないと分からないし、そうしてやっていくうちに、このお客さまにはこうして接したほうが良い、というのが自分なりに分かっていくんです。だから、スタッフには実際にいろいろ経験をさせてみて、その過程で失敗を重ねながら多くのことを学んでいってもらいたいです。

 

――素晴らしいですね。それではオーストラリアで頑張っている若い人へのメッセージをお願いします。
 今、自分に与えられている仕事には何か必ず意味があると思って、すぐには諦めないで継続することが大事だと思います。任されている仕事をきちんとやって、そこで人間関係をしっかり築きネットワークを張っていくと、どこかで点と点がつながっていくんです。「自分はこういうことがやりたい」と意思表示をしていくと、「そう言えば、あそこのあの人が…」という風に必ずつながっていき、そこからまた話が広がっていきます。だから何を売っているか、よりも人間関係が大切です。結果がすぐに出ることを求めるのではなく、意思表示をしながらコツコツと人間関係を築いていくことが大切だと思います。

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