【WH日記】生き方としての農業 ー 河合優樹さん

第23回

がんばるワーキング・ホリデー・メーカーにフォーカス

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

オーストラリアでがんばるワーキング・ホリデー・メーカーを毎月紹介。

 

今回登場のワーホリ・メーカーは?

河合優樹さん

1989年生まれ・静岡県出身
有機農業やパーマカルチャーを実践的に学ぶため、2013年に来豪。多くのファーム、WWOOFなどで2年間にわたり働く。趣味はバスケット・ボール。

ファーム生活で選んだ「生き方としての農業」

大学卒業後、ベンチャー企業でマーケティングの職に就き、激務に追われていた河合優樹さん。「お金に困ることはなくても、毎晩仕事のために睡眠時間を削り、食事は専ら外食かコンビニ弁当。内蔵に負担をかけるサプリメントやエナジー・ドリンクを飲み続けて体調を崩し、『こういう働き方で生きていくのは何かが違う』と真剣に考え出しました」と河合さんは言う。「人の体を作る『食』を突き詰めた時、自然に農業に目が向くようになったんです」と、その思いは徐々に大きくなり、会社員を辞して有機農業を志すという大きなターニング・ポイントを迎えた。

農業大国オーストラリアへ

会社員から農業家に。その決心に、迷いはなかったのだろうか。「海外での農業経験を持つ叔父に、日本の食の危険性、パーマカルチャーや有機農法の話を聞いていたことや、僕自身が元々健康オタクだったこともあって、抵抗はありませんでした。農業をやるということは必然的に生活スタイルも変わるということ。ただ有機野菜を買う立場になるのでなく、自分で農業をやってみたい、生き方そのものを変えてみたいと思ったんです」

河合さんはワーキング・ホリデー・ビザを利用し、農業大国オーストラリアで農業全般を広く経験することを選ぶ。通常、ビザ期間は1年だが、オーストラリアでは指定地域の第一次産業に一定期間従事すればさらに1年の滞在資格が得られる。

「1年目は一般のファーム、2年目はWWOOF(※主に有機農家で無償で農業体験を得るシステム)と決めて、まずQLD州ブリスベン近郊の個人経営のイチゴ農家へ。収穫作業がメインでしたが、食品流通というものに対して、それまで実感の湧かなかった部分が少し見えた気がします」

次に、河合さんはブリスベンから北へ車で4時間の農業地域・バンダーバーグで、レモンやトマトなどを扱う複数のファームで働いた。今度はオーストラリアとしては一般的な大規模農家が中心。100人以上を雇い、1日の収穫量と出荷基準を厳密に管理しながらの作業は、「ビジネス色が強く、食物を育てるのでなくロボットを作る生産工場のような体制でした。もちろん『製品』を効率良く出荷するためには農薬も多用します。農家とワーカーの間では仲介業者があからさまな搾取を行い、オーストラリアを嫌いになりそうでした」と当時を振り返る。スタンソープ、タスマニア州などでも作業経験と貯金のために働き、やがて待望のワーキング・ホリデー2年目が始まった。

有機農法と自然農法

オーストラリアはパーマカルチャー発祥の地としても知られ、河合さんにとってそれがこの国を選んだ最大の理由だったという。パーマカルチャー(Permaculture)とは、「Permanent(永久の)」と「Agriculture(農業)」または「Culture(文化)」を組み合わせた造語。自然環境と共生するライフ・スタイルを指し、自然農法や持続可能な建築で環境への負荷を最小限に抑えながら生きていくことだ。河合さんは有機農法と自然農法のパーマカルチャーを実践するいくつかのWWOOF先で、合計約1年を過ごした。

「有機農業(オーガニック・ファーミング)でも国ごとの規定量以下なら農薬や化学肥料を使用できます。作物の商品価値に影響する出荷量や見た目を管理するためです。一方、自然農法(ナチュラル・ファーミング)は化学的な物を一切使わず、自然状態に手を加えず育てる方法。僕はどちらにも興味があったので」と、働きながら農業の在り方について学ぶ日々。化学肥料・飼料を用いず、平飼いのアヒルの糞が土を豊かに育む農場と、そこで暮らす心豊かな人々に囲まれて充実した体験を得ながら、農業の厳しい現状を目の当たりにもする。

「ある一家が『ワーキング・ビザを出すので後継者になってほしい』と申し出てくれたのですが、必要な給与額を賄うことが難しいという現実がありました。プライドを持って安全で良い物を作る人たちがあまりにも報われない。お金を生む農業の仕組みと自然環境保護との妥協案に頭を悩ませながらオーストラリア生活を送りましたが、WWOOF先で『人間には地球を救えない。地球自身が救うんだよ』と言われ、共生するとはそういうことかと腑に落ちたんです。形式に固執せず、どんなスタイルでも良いから自分もそういう生き方をしなければ、と」

現在、河合さんは日本へ帰国し有機農家に就職。プライベートでは自然農法の家庭菜園を作り、「まずは家族や自分の食の安全が、子孫の健康や暮らしの安定につながることを実践して確かめたい。もちろん食事の基本である『楽しむ』ことも忘れずに」と話す。自然との共生をテーマに、河合さんの挑戦は始まったばかりだ。

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