【WH日記】1杯のワインから世界が広がる ー 富田堅巴さん

第27回
がんばるワーキング・ホリデー・メーカーにフォーカス

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

富田堅巴さん

オーストラリアでがんばるワーキング・ホリデー・メーカーを毎月紹介。

今回登場のワーホリ・メーカーは?

富田堅巴さん

1985年生まれ・神奈川県出身
25歳の時のスペイン旅行がきっかけでワイン好きに。日本のワイン・スクールで学んだ後、更にワインと深く関わるため2014年に来豪。

1杯のワインから世界が広がる

元々は全く飲めなかったという富田堅巴(けんと)さんがワインを好きになったきっかけは、約5年前のスペイン旅行だと言う。「何気なく入ったバーで飲んだベルデホというブドウで作られた白ワイン。直感に訴えかけた初めての味に感動し、それをきっかけにワインの世界に引きこまれました」と話す富田さんは、日本のテレビ番組の制作会社で働く傍らワイン・スクールに通い始め、ワインの歴史や文化、味や香りの見方を学び関連の資格も取得。知れば知るほどその魅力に取りつかれていき、友人らと勉強をしながらたくさんのワインに出合った。「心を揺さぶるワインはさまざまなことを想像させます。それぞれの背景にあるストーリーを知ることは、まるで大航海時代の船旅のように刺激的」と、次第にワインに自身の“生きる道”を重ねるように。やがて多文化と大自然を特徴とし、ワイン産地としても近年注目を浴びているオーストラリアへ渡ることを決めた。

ワイナリーと造り手を巡る旅

2014年10月、富田さんは1人車でメルボルンからアデレードまで数十軒のワイナリーを訪れた(注:ワイナリーとはブドウを発酵させワインを醸造する場所。畑を所有し農業と醸造を兼ねる所も多い)。「とにかくたくさんのワイナリーを巡りたかったんです。ブドウが生まれる畑を見て、作る人と話をして実際に試飲させてもらったり。人との出会いもありましたし、日本に入っていない素晴らしいワインの数々にも出合いました」と話す富田さん。造る人の人間性を垣間見ながら、その人の作品であるワインと向き合う日々を過ごした後、SA州バロッサ・バレー(Barossa Valley)のワイナリー「Smallfry Wines」で働くことを選んだ。バロッサ・バレーは古くからある良質なワイン産地の1つだ。「ブドウの果実を潰して放っておくと勝手にアルコール発酵が始まってワインになります。世界で一番単純に作れるお酒だからこそブドウ自体の質が重要で、畑と醸造所の両方を持つそこは理想的な環境でした」

仕事は多岐に渡り、日本で就いていた職とは全く異なるものの、日光を浴びて自然の中で働くことが性に合いとても楽しかったと富田さんは振り返る。「畑の草刈り、ブドウのつるの誘引、植樹、灌漑(生育期に雨が降らないため、点滴のようにブドウに水を与えること)などほとんどの作業を経験させてもらいました。ブドウの花が咲き、結実した後に実が大きくなって成熟し、それを収穫してワインを造るところまで。夢に見たワイン造りがそこにありました」

その後、以前訪れたワイナリーの1つであるVIC州レスブリッジ(Lethbridge)の「Lethbridge Wines」に移り、そこではワイン醸造の難しさや魅力により深く触れることになった。

富田さんにとってワインのおいしさとは?と尋ねると、「例えば母親の手料理のように記憶に訴えかけてきて、心が震えるような感覚。世界中がフランス・ワインをお手本にしている中でここは純粋に作り手がおいしいと感じるものを造っているんです。当たり前のことだと思われるかもしれませんが簡単ではありません。初めてここのワインを飲んだ時は自分が今まで得た知識を超え、単純に“おいしい”とだけ感じました。それでここでの生活の初日に『もう十分と思えるまでここにいていい?』と聞いたんです(笑)」。

ワイン“tomita”を造る

数カ月働き、ワインの仕込み作業が落ち着いたある日、ふと富田さんの今後についてワイナリーのボスと話すことに。「『許されるなら2016年もここで働きたい』と言ったら、『じゃあ、おまえのワインを造ろう』と突然言ってくれたんです。ワーキング・ホリデーでせっかく来ているから、ではなく、ビジネスとして本気のワイン造りを提案されました。やるなら本気だ、と」

これを受けワイン“tomita”を造るべく、富田さんは古巣のバロッサ・バレーからブドウを仕入れることを決め、2015年11月にブドウの下見も兼ねて再びその地を訪れた。「オーストラリアのワインは重く濃厚なものがベーシックで、最近は逆にライト・ボディや変わった造りのワインも人気です。でも僕はそれに迎合せず、オーストラリアという地で得られるブドウで、1人の日本人として、日本人の味覚でブドウに寄り添った『自然からの1滴』としての液体を造りたい。自分の人生や人間性を反映するような。ワインの完成まで分からないこともありますが、ここまで導いてくれた出会いや経験を糧に、あとは来る未来をどう受け入れるかです」

“tomita”は2016年9月頃にお披露目の予定で、日本への輸出も画策中だと言う。たった1杯のワインから動き始めた富田さんの世界は、ますます大きく広がっていきそうだ。

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