【WH日記】豪州代表として戦うアルティメット選手


豪州代表として戦うアルティメット選手

第33回 今回登場のワーホリ・メーカーは?


鮫島萌(もえ)さん


1985年生まれ・愛知県出身
大学入学と同時にアルティメットを始め、2008年、大学2年生で世界大会ジュニア部門に日本代表キャプテンとして出場。日本代表選手として12年、世界アルティメット&ガッツ選手権大会で優勝。15年にメルボルンのクラブ・チームに所属、世界ランク5位のオーストラリア代表に選出。


「アルティメットはフリスビー(フライング・ディスク)を使い、パスをつないでエンドゾーンまで運んで得点する競技です。ルールにはバスケットボールとアメリカン・フットボールの要素があり、コートはサッカー・コートの3分の2くらい。試合は7対7で行い、常に全速力で走りながらフリスビーが地面に落ちないようパスをつないでいきます」と爽やかな笑顔で話す鮫島萌さん。日本で12年のアルティメット競技生活を経て、2015年に来豪しメルボルンのクラブ・チームでプレーを開始、豪州代表選手にも選出された実力者だ。

高校卒業後、それまで続けたバレーボールを辞め、兄の薦めで入ったという中京大学のアルティメット部は、前年の国内大会優勝の強豪チーム。「負けん気が強く、どうしてもスターティング・メンバーとして試合に出たくて」という鮫島さんの努力が実を結び、大学2年生の時には世界大会のジュニア部門に日本代表キャプテンとして出場を果たした。

「今以上にマイナー・スポーツだったので、大会出場費用は全て自己負担。それでも代表メンバーと切磋琢磨できる環境に身を置いたことは、自分にとって転機になりました」

大学を出ると、平日は教員として働き、週末は地元愛知県のクラブ・チームで朝から晩までアルティメットの練習に明け暮れる日々を過ごした。

日本のアルティメットの世界ランクは現在6位で、世界選手権においても08年に準優勝、12年には優勝を飾るなど(両大会に鮫島さんも出場)、メディアへの露出も少しずつ増え始めている。

何度も世界の舞台で戦い成績を残したが、「それでも満足していなかった」と話す。「日本の“チームの戦術を大切にするスタイル”により個人の役割が固定されることに行き詰まりを感じ、もっと自分で考えてプレーしたいと次第に思うようになりました」

肌で感じた日豪の違い

鮫島さんが日本での第一線から退くことも考え始めたという14年、豪州代表キャプテンのミシェル・フィリップス選手の声が新たな道を開くことになった。

「萌、オーストラリアでやらない?」

過去に各国代表同士として対決した経験から親交があったという2人。鮫島さんは15年からフィリップス選手の所属するメルボルンのクラブ・チームに参加することを決め、ワーキング・ホリデー・ビザを取得した。

「ミシェルのチームは、自主的にイベントや資金集めのためのBBQを企画したりと、チームの『価値』を自ら作っていると感じました。代表候補の合宿にも参加し、プレー・スタイルもコーチの考え方も日本と違って目からうろこ。勉強して吸収したいことばかりでした」

自身が選手として練習を重ねながら、モナシュ大学のチームのコーチも引き受け、日豪のアルティメットのスタイルの違いを認識する日々が続いた。そして15年9月、選考会を経て鮫島さんは豪州代表選手に選出。代表チームに認められる外国籍選手はたった1枠で、「その1人に選ばれたことで、改めて技術や対応能力などを含めた『自分の価値』を認めてもらえたことが本当にうれしかったです。ただ、代表選手も補助金は一切なく、お金が本当に苦しくて……」。各選手は、自身の家賃や生活費とは別に、練習用の宿泊施設やトレーナー費用など毎月600~1,000ドルの活動費を払い続ける必要がある。鮫島さんは複数の職を掛け持ちし、練習時間の捻出にも悩まされたそうだ。

「でも日本に一時帰国した際に『スポーツ選手として旗を上げて活動してみては』とアドバイスを頂いたんです。思い切って仕事を辞めて『私はスポーツ選手です』と宣言したら、日本フライングディスク協会女性委員会の役員のお誘いや、世界大会前の講習会での講師のオファーなど多くのチャンスが巡って来ました」

インタビューを行った6月上旬現在、鮫島さんはロンドンで6月後半に開かれる世界アルティメット&ガッツ選手権大会への「豪州代表」としての出場を控えている。「この大会は私の豪州代表としての最初で、おそらく最後の試合」と鮫島さんは言う。「もちろん目標は金メダル。このチームでのプレーを観てもらい、アルティメットの世界を知ってほしいと思っています。その後は本場アメリカに行き、日豪米の違いを見て得たものをいずれ日本でのアルティメット競技の普及活動に還元したいです」と未来を見据える。日本の子どもたちのスポーツの選択肢にアルティメットが入る日は、もしかしたらそう遠くないかもしれない。

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