【WH日記】古き良き日本の伝統文化を世界に伝えたい – 佐々木芙美さん


「古き良き日本の伝統文化を世界に伝えたい」

第43回 今回登場のワーホリ・メーカーは?


佐々木芙美


1991年生まれ・宮城県出身
大学在学時、東日本大震災に見舞われ、津波で実家と祖母を失う。その後仙台市へと移り住み、東北の役に立ちたいという気持ちから地元の銀行に就職。3年間勤務した。現在は幼少の頃より慣れ親しんだ日本舞踊など日本の伝統芸能を海外に広めることを目指し活動中。


2017年3月11日。佐々木芙美さんの姿はシドニー北部チャッツウッドにあるコミュニティー・センターのステージ上にあった。当日、会場では東日本大震災の追悼イベントが行われていたのだが、そのステージで彼女は得意の日本舞踊を披露すると共に、自らの被災体験を集まった聴衆に向けて話した。

6年前の同日、佐々木さんは地震発生時、大学のある仙台にいた。

「私の実家は甚大な津波被害のあった沿岸部に位置する東松島市にありました。地震が発生した時は実家近くにあるアルバイト先の学習塾に向かおうと仙台から電車に乗ろうとしているタイミングでした。宮城は元々地震が多い場所で、何度か大きい地震も経験していましたが、それまで経験したことがないくらい大きな揺れに驚いたのを思い出します。発生直後、通信が混み合う前にと携帯電話のワンセグ機能でテレビの速報を確認したのですが『津波が来る』と警告が出ていて信じられない思いでした」

津波はそれから1時間以内に到達。実家は流されてしまった。地震発生時にそれぞれ勤務先などにいた家族と仙台で再会することが出来たものの、実家にいた叔父、祖母とは全く連絡が取れない状況が続いた。

「その3日後ですね。職場の人に救出されていた叔父と仙台で再会出来ました。でも、祖母の行方は依然分からないまま。祖母を車に乗せようと叔父が玄関前で待機していた時に津波が到達して、そのまま玄関先にいた祖母の姿は見えなくなってしまったということでした……」

情報が何も入って来ない中、祖母の姿を求めて避難所に足を運び続ける日々が約2週間ほど続いた。しかし願いかなわず、3月末に祖母の遺体と対面することとなった。

「祖母だけではなく、日本舞踊の恩師や同級生など多くの知り合いを亡くしました。それまで味わったことのないほど強く人の生存を願い続ける日々でした。いつも当たり前にいる人たちが、いるかどうか分からないというのはすごくつらい状況で戦争ってこんな感じなのかな、なんて考えていました」

実家が流されてしまったことで滞在の拠点を仙台に移し、大学卒業後は地元の銀行に就職した。

「本当は違う夢があったんですけど、東北のためにできることをしなければならないという思いがあって、地元に根差した企業に就職することにしました。自分がやりたいことを追いかけている場合ではない。そのような気持ちでした。でも、時間の経過と共に固くなっていた頭もほぐれ、やはりやりたいことを夢にした方が幸せかなと思うようになったんです」

幼少のころより、日本舞踊に親しんできた佐々木さんの夢は、日本古来の伝統文化を伝える活動に従事すること。英語の勉強も必須と考えた佐々木さんは3年間働いた銀行を退職しワーキング・ホリデー制度を利用し来豪を果たした。

人生、いつ何が起きるか分からない

来豪後、最初の1カ月はブリスベンに滞在。現地の小学校の日本語教師アシスタントのボランティアに従事。日本舞踊を生徒の前で披露、日本文化のレクチャーなど早速願っていたような活動が出来たという。その後シドニーに活動拠点を移す。

「シドニーに来てからは昨年末に行われた日本祭りのボランティア・スタッフをしながら、当日は日本舞踊のパフォーマーとしても祭りに参加しました。また、『シドニー着物クラブ』という団体ともご縁があって、日本舞踊を踊ったり着物の着付けのワークショップを開かせていただいたり、更に七五三や成人式の着付けを手伝ったりなど、いろいろな人とご縁でつながることが出来ました。充実した日々でした」

満足げにそう話しながらも

「でも英語は思ったほど伸びていないんです(笑)」と頭を掻く。

震災のつらい体験が、佐々木さんの前向きな姿勢を後押ししてくれている面もあるのでは。そう訊ねると少し神妙な面持ちでこう答えてくれた。

「人生、いつ何が起きるか本当に分からないと思っています。明日何が起きるか分からないので、その日その日を、自分の思い描く人生に近づけるように努めて生きなければと思っています。でも、まずは帰国後の就職活動を頑張らないと」

長期的な夢としては日本の伝統文化を伝える場を自ら作り出したいと考えているが、まずは2020年の東京五輪に向けて、増えつつある外国人対応への需要に関わる仕事を目指すという。

「東北ではまだまだ外国人の受け入れ体制が十分ではないと思っています。海外から日本を訪れた人が困らないように準備する仕事にオーストラリアでの経験を生かしながら関わっていけたらうれしいです」

そう話す佐々木さんの瞳は未来を見据え、希望に明るく輝いていた。

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