【WH日記】ワーホリの経験を1杯のカクテルに込める – 石井智康さん

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

ワーホリの経験を1杯のカクテルに込める

第55回 今回登場のワーホリ・メーカーは?

石井智康さん


1991年生まれ・東京都出身
大学在学中、アルバイトとして東京・銀座のバーで働き始めたことをきっかけにバーテンダーのキャリアをスタート。卒業後、2年間の同店勤務を経て2016年9月にワーキング・ホリデー制度を利用し来豪。来豪後はファームでの滞在を経て、現在はシドニー市内のバーでバーテンダーとして活動中


照明に照らされたバー・カウンターの中、鮮やかな手つきでカクテルを次々と作る、バーテンダー・石井智康さん。優雅なその立ち振る舞いには、「バー・カウンターの内側は舞台だから」と、駆け出しの時にかけられた言葉が今もなお生かされている。

石井さんが現在のキャリアを目指したきっかけは、高校生の時に読んだ漫画『バーテンダー』だった。お酒を飲める年齢ではなかったが、「カクテルの背景にある物語を知ることが面白かった」とその漫画から大きな感銘を受け、バーテンダーになることを考えたそうだ。大学在学中は、観光業を学んでいたためホテル・コンシェルジュの道も将来の選択肢にしていたというが、それでもバーテンダーへの憧れは勝り、就職活動中に、アルバイトとして働き始めた東京・銀座のバーでキャリアをスタートさせた。

高校時代からの憧れの職業に就いたが、実際にカクテルを作れるようになるには長い下積みが必要だという。

「下手なカクテルを提供することは決して許されないので、求められる基準がとても高く、下積みは必然的に長くなります。10年近くカクテル作りのポジションに移れない人もいるそうです。それでもカクテルを作れるチャンスはいつ来るか分かりませんから、日々勉強を続けないといけません」

長い修行のような時間を覚悟していたが、大学を卒業し正社員として働き始めた矢先、先輩スタッフの急な退職で幸運にもカクテルを作るポジションを任されることになった。それはまた、石井さんが当初思い描いていたプランの変更につながったそうだ。

「バーテンダーとして本格的に働く前から、いつか海外に行きたいという思いがあり、日本で十分な経験を積んでから実行に移そうと考えていました。しかし、すぐにカクテル作りを学べたことで、それならば早く行こうと社会人1年目が終るころに店長に退職の意思を伝えました」

海外に興味を持つようになった理由をこう続ける。

「海外のカクテルには、日本では比較的珍しい技術がよく用いられています。その技術や最新のトレンドを知るうちに、実際に見てみたいという気持ちが強くなったんです」

日本でもバーテンダーの技術を磨き続けられるかもしれないが、より違った発想を手に入れたい――。そう考えた石井さんは、ワーキング・ホリデー制度を利用しオーストラリアに渡った。

バーテンダーとして得た以上のもの

来豪1年目は、オーストラリア国外でカクテルの知見を深めるための旅をしたことを除き、セカンド・ビザ取得のため半年近い時間をファームで過ごした。石井さん曰く「何をしにオーストラリアまで来たのか」と悩んだ時もあったというが、その状況下でもバーテンダーの経験を無駄にしないためにできることはないかと考え、ある試みを思いついた。

「和食の料理人をしていた人と仲良くなったので、和食とそれに合うカクテルを提供するケータリング・サービスをファームの宿泊先で始めました」

「お客さんの獲得が難しかった」と振り返るが、その試みでは更なる挑戦が求められた。しかし、それによって自身のバーテンダーとしての成長は更に促進されたという。

「材料が限られる環境だったので、日本で作っていたカクテルに近い物を再現するためにニンジンや小豆など過去に使わなかった材料で代用しなければなりませんでした。ただ、それによって新たな発想力を身に着けることができたんです」

ファームでの仕事を終えシドニーに移り住んだ2年目には、新たな知識やアイデアを吸収するため業界の最先端を行くとされるバーに足を運び続けた。そうした地道な努力が、来豪前に抱いていた思いをかなえる結果につながった。

「海外のバーで出されるカクテルは、まず飾り付けにおける発想からして大きく違いました。泡のフォームを作りカクテルに載せるなど斬新なアイデアが多く見られました。銀座のお店では、飾り付けが最低限だったこともあり、大きな勉強になりました」

バーテンダーとしての成長を望み歩み続けた2年間のワーキング・ホリデー生活。その経験が今後どのようにつながると思うかと最後に質問した。すると、それまでの蓄積を実感するようにこう答えてくれた。

「人と接する仕事をする以上、今回のあらゆる経験は何らかの形で必ず生かされると思います。お客さんによってはワーキング・ホリデーの経験を基に何かアドバイスができるかもしれません。その時、人としての厚みを出せていたら、うれしいですね」

多くを吸収した1人のバーテンダーは、成長した姿で目の前のお客さんに向き合おうとしている。

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