【ワーホリ・ダイアリー】「友への恩返し」

第2回
がんばるワーキング・ホリデー・メーカーにフォーカス

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

オーストラリアでがんばるワーキング・ホリデー・メーカーを毎月紹介。

 

 

今回登場のワーホリ・メーカーは?

松田裕之(まつだひろゆき)さん

1982年生まれ・岡山県出身
趣味・特技:ゴルフ、マラソン、落語、映画鑑賞

「僕自身が悔いの残らないように生きること
それが亡くなった友にできる何よりの恩返し」

 

初めて訪れた海外はチベットだった。「過保護に育てられたこともあり、思春期に外の世界をあまり知らぬまま過ごしたことが大きなコンプレックスで、それならば逆に『これから誰よりもたくさんの場所に行き、新しいことを吸収してやろう』と考えていました。そんな折、チベットが渡航禁止になるという噂を聞いて行かねばと思ったんです。海外旅行を続けるうち、住まなければ分からないこともあると思い、大学を休学し1年間カナダに住んだりもしました」

卒業後、国内のリゾート系企業に入社。総務部での株主総会の担当を経た後、茨城県にあるゴルフ・リゾートで営業担当として働く日々が続く。そして2011年3月11日、東日本大震災に見舞われることとなった。

震源に近いこともあって、事務所はもちろんコースも深刻なダメージを受け、また風評被害にも苦しめられた。

「震災後、生き方を見直しました。日本でサラリーマンをしていれば順調な人生を送れるかもしれない。でも、安定を目指したところで人生はいつ急激に変化するか分からないし、将来後悔したくないと思いました」

会社を辞め、海外に出ることを心に秘め、社員としての使命感から会社の建て直しに1年間を捧げた後に来豪。もともと海外志向が強かったこともあるが、その背景にはさらに大きな親友との約束があった。
 

親友との約束


子どものころからやっていたゴルフは特技の域。来豪後も定期的にゴルフ・コンペに参加し、入賞を繰り返しているという

「大学時代、旅好きの親友と車の中で寝泊りしながらの貧乏小旅行をよくしていました。しかし、海外旅行となると『行きたいけど、またそのうちに』が彼のお決まりのセリフ。1度も日本を出たことのない彼にとって、海の外へ渡ることは大冒険のように感じているフシがありました」

その後大学を卒業し、友人は地元で公務員として就職。安定した給料とともに時間的余裕が生まれたが、逆に松田さんの方が忙しい毎日を送り、旅行の誘いに乗れない状況が続いた。そんなある日、ガンという病魔が親友の身を襲う。

「見舞いに行くと笑顔で『いやぁ、参っちゃったよ』と冗談めかして出迎えてくれました。迂うかつ闊にも僕はその時『これならまだまだ大丈夫だ』とほっとしてしまいました」

そして彼が元気なうちにと、国内の名所旧跡を一緒に訪れる日々が再び始まった。

「お互い『またそのうちに』とだけは言わないことが、暗黙の了解となっていました」

ある日、2人の間でこんな会話が交わされた。

「俺は病気だけど、保険金のおかげもあってお金の心配はない。一方、お前は健康だけど、毎日お金の心配ばかりしているな」

「全くだ。世の中うまくいかないものだね。ところで、お金があって健康だったら、何をしたい?」

「そうだなぁ。そのうち、海外に1度でいいから行ってみたいよ」

その時彼は既に海外に行くほどの時間が残されていないことを覚悟していたのかもしれない。「そのうち」は永久に来ることはなかった。そして友人は遺書にこう記していたという。

「松田に俺の貯金を有意義に使ってほしい」
 

「親友の分まで人生を生きる」

 松田さんは亡くなった彼の想いを受け、遺影をかばんに携えオーストラリアの大地を踏みしめた。

「『そのうち』と思っていることは絶対に実現しません。今でもなぜ海外に無理矢理にでも連れ出してやれなかったのかとそればかりが悔やまれます」

翌日にシドニーでの半年の生活を終え、セカンド・ワーホリ・ビザを取るべくタスマニアへと移動する松田さんに尋ねてみる。こちらの生活で何を成し遂げたいですか?

「1冊の本をしっかりと読み込む人もいれば、乱読する人もいるように、僕はなるべく多くの本を読みたい。1回きりの人生です。多くの仕事を経験し、多くの場所で暮らし、いろんな人の人生、考え方を吸収したい。だから、僕はまだ『これを成し遂げる』と限定したくないです。彼の遺志を継いで海外に移住してきた以上、僕自身が彼の分まで悔いの残らないように生きることが何よりの供養だと信じています」

亡くなった親友の想いを背負い、訪れたオーストラリアでの生活はまだ始まったばかりだ。白紙の彼の地図に何が書き込まれていくのか。楽しみに見守っていきたい。

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