自殺か他殺か? 疑惑を呼ぶ美人モデルの死

オーストラリア・クライム・レポート
 1995年6月、シドニーの自殺名所として有名な断崖ザ・ギャップで、死体となって発見されたキャロライン・バーンさん(当時24歳)。美人モデルの謎の死に警察は自殺という結論を出していたが、キャロラインさんの父親の執念が実ったと言うべきか、当時のボーイフレンドであったゴードン・ウッド氏が殺人容疑で逮捕され、審問の結果、裁判で白黒を付けることになった。
(写真)自殺が一転、他殺の可能性が濃くなった美人モデルのキャロライン・バーンさん(当時24歳)

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断崖絶壁のギャップ。女性が12メートルも離れた場所へ飛べるものだろうか ?

自殺したレネー・リブキン氏の名前が浮上
「娘が自殺する訳がない。殺されたのだ」と12年間言い続けてきた父親のバーン氏は、ウッド氏が裁判で裁かれることが決定した時に、父親のセオリーとして「娘は、ゴードンがレネーと関係があってそれを公にするかもしれないとう理由で殺されたのではない。もっと大きな犯罪、オフセット・アルパインという印刷会社の不審な火災事件の真相を知っていたため殺されたのだと思う」と、コメントした。
 これに関して、若干説明が必要である。1995年のこの美人モデルの死は、センセーションを呼んだ。関わっている人間がみなビジュアル系であったことがその一因であるが、有名人の名前が上がったことも加わり、連日メディアで報道が続いた。最初から、“自殺ではない、キャロラインが、ゴードンとレネーの関係に腹を立てて、公にすると息巻いたために口を封じられたのだ”という噂がいろいろな所で執拗に囁かれた。
 そのレネー・リブキン氏は、当時実業家として成功を収めていた人物。3児の父親でもある氏に、なぜこういう噂が囁かれたかというと、ある雑誌の記事にもなったが、氏は常時周囲を若いイケメン連中で固め、それが 少々異常に映ったからである。ただ、氏はルックスに多大なコンプレックスを持ったいたらしく、某テレビ番組で、「超リッチで今の顔と、まあまあのリッチでイケメンの二者択一なら、もちろんまあまあリッチの方を躊躇なく選ぶ」と答えており、単にイケメンに憧れがあっただけなのかもしれない。
 一方、1993年にオフセット・アルパインという印刷会社が火災に見舞われ、400万ドルとされた同社価格に、5,300万ドルもの火災保険金が支払われた。この恩恵を受けた者が誰なのか当時は分からなかったが、後年ある偶然から、リブキン氏と元政治家グラハム・リチャードソン氏、実業家のトレバー・ケネディー氏であることがすっぱ抜かれ、スイスの秘密銀行口座に入金されていたことが発覚する。


 さらに、ウッド氏が、当時リブキン氏を囲むイケメンの1人で、彼の運転手兼アシスタントとして働いていており、スイスの銀行にも同行したことが明らかになる。以降、バーンさんの死に関する噂は、単に人間関係のもつれではなく、背景に大きな犯罪があることを匂わせるようになった。
 この火災疑惑が今後どういう展開をするのか定かではないが、バーンさんの父親は、「キャロラインは、あの火災は仕組まれたものと言っていた。真相が公になるのを恐れて殺されたのだと思う」と 心境を吐露した次第である。なお、リブキン氏は、株のインサイダー取引により有罪の判決を受け、週末だけの収監を経た後、昨年、自殺という悲劇で人生の幕を閉じている。
 実は、電話でリブキン氏と話したことがある。10年以上も前、本紙で「オーストラリアのトップ・ビジネスマンに聞く」という連載のためインタビューを申し込んだのだ。結局、時間の都合が付かずインタビューは実現しなかったのだが、話し方から非常に豪快で存在感にインパクトがある人物という印象を持った。しかし実際には、長らく鬱病を患っていたという。
 このオフセット・アルパイン火災事件で一番不思議に感じたのは、信じられないほどの莫大な保険金が簡単に支払われている点だ。誰でも経験があると思うが、車の保険のクレームでさえ、おいそれと支払ってくれるわけではない。調べてみると保険会社は、現在、大手損保HIH社破綻に絡む経済犯罪で実刑判決を受け服役中のロドニー・アドラーが社長を務めていたFAIであった(FAI社は、99年にHIH社に3億ドルで売却され、アドラーは、HIH社取締役に就任した)。リブキン氏が事業の資金繰りに苦しむようになった90年代初め、最大の債権者がアドラーのFAI社であり、2人の結び付きは深かったという。
事件の内容
 ウッド氏逮捕の大きな要因になったのが、キャロラインさんの死体が発見された位置。崖から約12メートルも離れた所で発見されたため、専門家が何者かに投げられた証拠であると鑑識したのだ。当日、キャロラインさんとウッド氏の2人によく似た人物ともう1人を加えた3人組が、何人もの人によってギャップ近くで目撃されている。しかし弁護側は、ウッド氏は当日ギャップには行っておらず、死体の位置も、バーンさんは抜群の運動神経を持っていたため、ジャンプしてその場所に転落したのだ、と説明。そして事故の2年前、キャロラインさんは鬱病を患い“死にたい”と洩らしていた事実を挙げ、加えて母親が鬱病のため自殺しており、遺伝的な背景も含めて自殺以外の何物でもないと反論している。
 しかし、審問の内容を見ると、いろいろな疑問点が湧いてくる。まず、死亡時刻当時、キャロラインさんの大きな悲鳴を数人が聞いているが、果たして自殺する人が悲鳴をあげるだろうか ? そして、真っ暗闇の中、ハンドライトのわずかな光で遺体を発見したウッド氏の、「彼女の霊が僕を導いてくれたから」というコメントにも首をかしげたくなる。実際にギャップに立ってみると分かるが、自殺する場所が限定されているわけではない。また、目撃されているもう1人の男性は、キャロラインさんが所属するモデル・クラブの人間と判明しているが、彼の証言が一切出てこないのはなぜか…。
 裁判は今年の後半にスタートする予定だ。前述の疑問にどういう答えが出てくるのか。メディアがヒートアップするのは必至で、再びセンセーションを巻き起こすのは間違いない。
 自殺か他殺か ? 美人モデルの死に陪審員はどのような判決を下すのか、興味は尽きない。            (K.S.記)

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