1〜3月のマイナス成長は一時的

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小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

1〜3月のマイナス成長は一時的

今年1〜3月期の豪経済成長率は、前期比で大幅なマイナスとなった。ただしこれは、今年初めにQLD州が大洪水に見舞われ石炭輸出が滞ったことなどによる一時的な落ち込みとみられている。一方で、金融危機後の世界経済をけん引してきた中国経済の先行きに不透明感が漂ってきており、米国の景気回復の足取りの重さも目立つ。豪準備銀行(RBA、中央銀行)は、中期的に国内経済は拡大するとの基本線は維持しながらも、世界経済の下振れリスクへの警戒を強めている。

自然災害なければプラス

豪統計局が6月1日に発表した1〜3月期の実質GDP(国内総生産)は、季節調整ずみで前期比1.2%減少した。金融危機の影響で世界的に不況が広がった2008年10〜12月期以来のマイナス成長で、減少率としては1.3%減となった1991年第1四半期以降で最大。洪水による炭鉱への浸水や輸送インフラ被害などで、石炭輸出が3割近く減少したことなどがGDPを押し下げた。

スワン副首相兼財務相は、洪水とサイクロンによる石炭や農業生産の減少が同期の成長率を1.7ポイント押し下げたとの推定を示した。自然災害の影響がなければGDPは0.5%増となっていた計算で、その場合でも、昨年10〜12月期の0.8%増(改定値)からはやや減速となる。4〜6月期については、自然災害の影響が薄れ復興が加速する中で力強い回復を示す公算が大きいとの期待を示した。

1〜3月期のGDPについて、RBAがどの程度のマイナスを予測していたかは明かでない。ただ、GDP発表の翌週のRBA理事会では、資源部門に牽引されて豪経済は「向こう数年間、過去の平均をいくぶん上回る成長が見込まれる」とし、従来予想の基本線は維持した。一方で、この1カ月間の統計で利上げの「緊急性が増すことはなかった」としており、予測通りかそれよりも悪い数字だったとみられる。理事会は、政策金利の据え置きを決定した。

RBA理事会議事録は、国内経済の先行きについて、鉱業生産の落ち込みは一時的と指摘。鉄鉱石は既に通常の水準を回復しており、石炭輸出も2月以降、徐々に戻りつつあるとした。鉱業生産の回復は、4〜6月期と7〜9月期のGDPの伸びにかなり寄与するとみている。輸出品である資源価格高で上昇している交易条件をめぐっては、4〜6月期にさらに改善し、その後は中期的に徐々に低下していくと予測した。

企業の設備投資に関しては、鉱業部門以外では「かなり弱い」とし、資源ブームに沸く鉱業部門とそれ以外の温度差に言及。家計は、引き続き支出や借り入れに慎重で、小売売上高の伸びは控えめ、住宅市場は依然として軟調だとの認識を示した。失業率はこの数カ月間横ばいであり、雇用の伸びのペースは昨年終盤に比べて鈍化しているようだとする一方、1〜3月期の民間部門の賃金価格指数が前年同月比3.9%上昇と平均的なペースを上回り、鉱業関連部門での上昇が目立ったと指摘した。

■オーストラリア実質GDPの推移

見通し不透明な世界経済の影

RBAのスティーブンス総裁は講演で、今後、インフレが徐々に加速するとの見方に立ち、その抑制のために「ある時点」での利上げが必要になる公算が大きいと述べた。市場では、その「ある時点」をめぐって思惑が広がっているが、取りあえずは7月末の消費者物価指数(CPI)統計を見てからでも遅くないだろうとの観測が強まっている。RBAが指摘するように、資源とそれ以外の温度差を抱える豪経済の状況や世界経済に目先の不透明感があるためだ。

豪州が資源輸出で大きな恩恵を受けてきた中国経済をめぐっては、インフレが高進しており、不動産バブル化や経済のハード・ランディング(急降下)・リスクを懸念する声も一部に浮上している。米国経済に関して米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、今後景気は加速するとしながらも、住宅市場や金融部門の問題などもあり「見通しはかなり不透明」と言明。欧州はギリシャなどの債務問題を抱えており、大震災被害を受けた日本の1〜3月期の実質GDPは前期比0.9%減少した。

RBAは6月の理事会では、「世界の(経済)活動の指標はいく分弱まった」と指摘。「世界的な動向のほか、内需とインフレ圧力の強さに関するさらなるデータが得られるまで政策スタンスは変えずに置くことが賢明」と判断した。コモンウェルス証券チーフ・エコノミスト、クレイグ・ジェームズ氏は、金融政策に関して「RBAは様子見モードにあるようだ」との見方を示している。

ビール最大手に買収提案

ビール世界第2位の英SABミラーが豪ビール最大手フォスターズに買収提案を行ったことが明らかになった。買収条件はフォスターズ1株当たり4.90豪ドル、総額では約95億豪ドル(約8,080億円)となる。SABはかねてからフォスターズ買収を検討していると報じられていた。フォスターズ取締役会は、価値を過小評価しているとして提案を拒否したが、SABは、経済が堅調で人口も増加する豪州は「とても魅力的な市場」としており、買収価格の引き上げでフォスターズ側に理解を求める可能性がある。

フォスターズは、「ビクトリア・ビター(VB)」「フォスターズ・ラガー」などのブランドを保有する。豪ビール市場でのシェアは約5割でトップ。09年にキリンホールディングスの完全子会社となったライオンネイサンは約4割のシェアで追い掛けている。フォスターズは今年5月に不振のワイン事業を分割。買収がしやすくなった。これまでに、アサヒビールや、米ビール大手のモルソン・クアーズ・ブリューイングとメキシコの同業グルポ・モデロの企業0.7%連合などが買収を検討していると報じられたこともある。

第一生命保険は、約3割出資していた豪同業タワー・オーストラリアの残りのすべての株式を約11億9,300万豪ドルで取得し完全子会社化、6月1日付で同子会社の社名を「TAL」に変更した。シドニーで行われた記念式典であいさつした第一生命の渡辺光一郎社長は、豪州は「高い経済成長とともに人口が継続的に増加している最も有望な先進国市場だ」と述べ、今後の海外事業拡大の布石となる同子会社への期待を示した。

国際石油開発帝石は、豪子会社を通じて開発準備を進めている液化天然ガス(LNG)事業「イクシス」で生産予定の年840万トンのLNGについて、販売のめどがついたと発表した。全体の7割に当たる595万トンが日本向けとなる予定。日本の年間LNG輸入量は約7,000万トンで、同事業からの輸入はこの1割近くに相当する。事業は、国際帝石が76%、仏トタルが24%の権益を保有し、17年までの操業開始を目指している。

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