【豪経済】利下げ観測再浮上

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小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

利下げ観測再浮上、年内2回との見方も

利下げ観測が再び強まってきた。オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は、早ければ10月2日の理事会で現行3.50%の政策金利の引き下げを発表するとみられている。豪州の鉄鉱石輸出の約7割を占める中国の景気減速が長引き、鉄鉱石価格などは下落したが、豪ドル相場は高止まりしている。「RBAは10月と11月にそれぞれ0.25%利下げする」(ANZ銀行)といった見方も浮上している。

◇資源輸出額、3年ぶり前年割れへ

豪貿易統計によれば、昨年の豪州の鉄鉱石輸出額は641億ドル。モノとサービスの輸出全体に占める鉄鉱石の比率は20.5%で、石炭は14.9%だった。輸出全体に占める一次産品の比率は6割と、2001年の4割弱から拡大。“稼ぎ頭”である資源の豪経済への影響度は大きい。昨年にはトン当たり190米ドル近辺まで上昇した鉄鉱石価格は、一時90米ドルを割り込み、3年ぶりの安値を付けた。

豪資源・エネルギー経済局(BREE)は、12年度(12年7月〜13年6月)の鉱物・エネルギー輸出額が09年度以来、3年ぶりに前年度を下回るとの見通しを発表している。輸出額は前年度比2%減の1,891億8,900万ドルと、6月時点の2,094億5,900万ドルから下方修正。輸出量は増加しても価格下落が響くと予測した。豪経済のけん引役としての資源輸出は、目先、期待できなくなっている。

BREEの発表を品目別に見ると、12年度の鉄鉱石の輸出量は8%増加するものの、国際価格が27%低下するため、輸出額としては16%減少すると予想している。製鉄原料の原料炭については量が12%増加するが、価格が28%低下し、輸出額は15%減少するとしている。一方、液化天然ガス(LNG)は量が21%増加、価格も12%上昇し、輸出額は36%増加すると見込んでいる。

◇開発投資が現在のけん引役

ファーガソン資源・エネルギー相の8月の不用意な発言で巻き起こった「資源ブームの終焉」をめぐる議論。どうやら、ブームには3つのフェーズがあって、その最初の「価格ブーム」は終わったもようだが、開発や生産拡大のための「投資ブーム」は13〜14年ごろにピークに達し、さらに、その開発の成果として、長年にわたる「生産ブーム」を迎えることになるという結論で落ち着いたようだ。

「価格ブーム」から経済のけん引役を引き継いだ「投資ブーム」。液化天然ガス(LNG)開発などの巨額の投資が行われている。スワン副首相兼財務相は、今年6月末までの年度ベースで豪経済が21年連続成長を達成したことを確認した声明で、資源価格下落が国内の開発投資計画の一部先送りなど影響を与えたことを認めつつも、世界的な不安定さの中で、開発投資が豪経済を下支えていることを強調した。

◇議事録は利下げ「余地」に言及

RBAの9月の理事会では、政策金利であるキャッシュ・レートを3カ月連続で3.5%のまま据え置くことを決定した。理事会直後に発表したスティーブンス総裁の声明は、「インフレが目標に沿うと見込まれ、成長はトレンド付近にある」と指摘。国内の経済状況に一定の満足感を示しつつ、世界的な経済見通しは「数カ月前よりも抑制的」だと警戒感をにじませ、現状の緩和的な政策スタンスは引き続き適切だ、とした。

ただ、その2週間後に発表された同理事会の議事録要旨には「インフレ見通しには引き続き、かなりの成長見通しの悪化に対応して、政策を調整する余地がある」と、総裁声明にはなかった利下げの可能性に言及する一文が盛り込まれた。豪州の利下げ「余地」への言及は少なくとも8月の理事会後の声明と議事録にはなかったことから、利下げ実施への「地ならし」的なシグナルを議事録で発信した可能性がある。

9月の理事会以降の世界の動向を見ると、9月の理事会以降、欧州では債務危機対策で欧州中央銀行(ECB)が重債務国の国債の無制限購入計画を発表。米連邦準備制度理事会(FRB)は量的金融緩和第3弾(QE3)を打ち出し、日本銀行も追加金融緩和に踏み切った。中国は、景気てこ入れのため総額1兆元(約12兆円)超のインフラ整備計画を承認。これを受けて鉄鉱石価格もやや持ち直すなど、大きな動きがあった。

9月のRBA理事会は、そうした動きの前に開かれたことに留意する必要があるが、少なくとも理事会時点では、中国経済に関する認識を下方修正している。8月の議事録では、中国経済について、「成長はより持続可能なペースで安定化しているかもしれない暫定的な兆候が一部にある」としていたが、9月には「最近の大半のデータは少し弱く、鉄鉱石や原料炭のスポット価格の急落を伴っている」とし、豪経済予測が下振れする恐れにも言及した。

◇豪ドル高への懸念


LNG開発などの巨額投資が行われており、開発投資は豪資源ブームの現在のけん引役となっている。写真は今年4月に豪石油・ガス生産大手ウッドサイド・ペトロリアムが操業を開始したWA州北西部沖LPG海底ガス田「プルート」開発事業の陸上ガス・プラント。関西電力と東京ガスがそれぞれ5%の権益を保有している(Photo: Woodside)

外国為替市場での豪ドル相場をめぐって議事録は、「若干過大評価されているかもしれない」とし、豪ドル高が「想定よりも経済に重くのしかかる可能性について議論した」ことを明らかにした。また、抑制の動きも一部にある資源開発投資について、目先の投資全体にとっては小さな影響にとどまる公算が大きいとしながらも、人件費などコスト高や資源価格の軟化でさらに見直しが続く懸念があるとも指摘した。

資源ブームの副作用としての豪ドル高は、国内の製造業などを圧迫したが、逆に資源価格が下げれば豪ドルも下落し、国内経済の下支え効果をもたらすといった、景気の調整弁的機能も期待されていた。しかし、豪ドルはそれほど下がらず、RBA理事会で議論されたように、豪経済への想定以上の重しとなる懸念が強まってきた。世界的な金融緩和の流れの中、高格付けで利回りが比較的高い豪国債に対する海外からの投資も豪ドル高の一因とされる。

ANZ銀行は、資源価格が急落しても豪ドルが高止まりする状況に対処するために「金利を引き下げる必要がある」と指摘する。経済をけん引する資源開発投資についても、資源価格が想定を下回れば向こう1年から1年半に達するピークから急速に落ち込む公算が大きいとも警告。政府は今年度の財政収支黒字化の目標を掲げており、資源価格下落で税収が予測を下回れば、「財政政策引き締め、金融政策緩和」の方向だとみている。

ウエストパック銀行も、RBAは政策上重視する消費者物価統計の10月下旬の発表を待たずに利下げに踏み切るとの見方を示している。同行は次の利下げは11月に行われると予想していたが、理事会議事録の内容を踏まえ、10月に1カ月早めた。「RBAは10月と11月に政策金利を0.25%ずつ引き下げた後、来年1〜3月期にもさらに0.25%引き下げる」と予想している。

一方、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)は、RBAが追加緩和に慎重な姿勢を継続するだけの「十分に好ましい状況」があるとして、次回の利下げは10月というよりも11月に行われるとみる。11月、さらに来年2月にそれぞれ0.25%引き下げられるという見立てだ。

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