【豪経済】利下げ方向継続か

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小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

利下げ方向継続か

オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は11月6日の理事会では、政策金利の据え置きを発表した。エコノミストらの間では2カ月連続の利下げに踏み切るとの事前予想が優勢で、そうした期待を裏切る結果となったが、RBAのスティーブンス総裁は後日の講演で、「やがて一段の緩和が必要になるかもしれない」との認識が同理事会であったことに言及、先行きの利下げの可能性を示唆している。

 現行の政策金利は3.25%で、昨年11月以降の引き下げ幅は今年11月までで合計1.50%に達する。エコノミストらには、早ければ12月4日の理事会でRBAは利下げ決定に踏み切るとの見方もある。ウエストパック銀行のチーフ・エコノミスト、ビル・エバンズ氏は、労働市場の軟化、経済成長見通しの不透明感、インフレ抑制への自信から、クリスマス前の「0. 25%の追加利下げ」を予想している。

スティーブンス総裁は11月20日の講演では、具体的な利下げ時期のめどには言及しなかった。一方で、理事会では「相当の緩和が既に行われ、その効果がまだしばらくの間表れてくるという意識もあった」と述べており、利下げ効果の“見極め”を優先してすぐには利下げしない可能性も漂わせている。12月に利下げが見送られた場合、年明けの1月には理事会は開かれないため、次の機会は2月となる。

同総裁は、11月に利下げを見送った理由については、「最近のインフレ指標は大きな問題ではなかったが、少し高い側だった」とするとともに、世界経済の陰りが若干後退したことに言及。「差し当たって(状況を)見守ることが賢明のように思えた」と説明した。先行きの金融政策運営に当たっては、持続可能な成長と年2〜3%のインフレという目標にとって適切かどうかを問い続けていくことになろうと述べた。

◇成長、緩んだあと回復へ


RBA総裁のグレン・スティーブンス氏

RBAは11月の四半期報告で、資源価格下落やコスト上昇などを背景とした国内の開発計画先送りなどの動きを受け、実質GDP(国内総生産)の成長率見通しを若干下方修正。2013年4〜6月期について、前年同期比2.75%とし、3カ月前の予想(3%前後)から引き下げた。ただ、14年10〜12月期については、3%前後との予想を維持した。景気の弱まりはインフレにとっては抑制要因となる。

スティーブンス総裁は講演で、国内経済の部門ごとの見通しに関して、「個人消費は恐らく、所得の動向に沿ってトレンド(平均的)ペース程度で拡大していく」と述べている。「これまで著しく弱かった」とする住宅建設分野では需要の伸びが強まる可能性があるとし、その根拠として、①金利の低下、②住宅価格が下げ止まったとみられること、③住宅賃貸収益率の上昇、④着工許可の増加——などを挙げた。

総裁は、豪経済のけん引役となっている資源ブームに関しては、3つのフェーズがあり、最初の価格ブームは1年以上前にピークを迎えたと説明。第2の資源開発投資ブームは13年か14年にピークを迎えるが「その高さは恐らく、半年前にわれわれが考えていたよりも少し低くなろう」と予想した。開発の結果輸出が拡大する第3のフェーズは鉄鉱石では始まっているが、ガスなど「大半はまだ先」だと語った。

資源の最大の輸出先である中国の経済をめぐっては、非常に急速な成長から「ある程度減速するのは不可避なことだった」としつつも、「(中国の)減速は、1年前に予想していたよりも大きかった」と認めた。また、「中国の経済動向は豪経済への影響度を強めている」とし、中国の製造業購買担当者景況指数(PMI)などが豪州の株価や豪ドル相場を動かし得る材料になっていることに言及した。

豪ドル相場については、資源価格ブームのピークが1年以上前に過ぎたことなどを踏まえれば、「少なくともこれまで、あまり下落していないのは驚きだ」と語った。11月24日の海外市場では、豪ドル買いの流れや、安倍晋三自民党総裁の日銀に対する金融緩和圧力をきっかけとした円安基調を背景に86円台と、4月初め以来の高値水準を付けた。

◇成長取り込み狙うアジア白書

ギラード豪首相は11月中旬、経済界との会合の講演で、豪州の未来を切り開く人々にとって「現状満足は最大のリスクだ」と警鐘を鳴らした。アジア経済の急成長は豪州にとって「かつてない好機だ」とアピール。その恩恵を豪州として最大限に取り込んでいくためには、受け身の姿勢ではなく、積極的に行動を起こしていく必要があると努力を求めた。

政府は10月下旬、25年にかけて豪州が目指す方向や目標を示した「アジアの世紀における豪州」白書を公表した。生産性向上のための人材育成や研究開発、規制改革から、地域の安定のための外交・安全保障まで、25項目について目標と針路を示した。ギラード首相によれば、「豪州の将来プランを見たい」という経済界の要望に応えたものでもあったという。

白書では、25年には世界の経済大国(実質購買力平価ベース)上位10カ国のうち4カ国をアジアが占めるとの予測が示されている。中国は14年には米国を抜いて世界第1位に浮上。インドが3位、日本が4位と続き、インドネシアが10位という具合だ。25年には、世界の経済生産の半分近くをアジアが、そしてその約半分を中国が占める形になるとしている。

◇1人当たりGDP、25年までにトップ10

世界経済の重心がアジアに向かって移動する中、アジアとの経済的結び付きをさらに進めることによって、豪州の1人当たり実質GDP(国内総生産)は11年の世界第13位から、25年までにはトップ10入りし、1人当たり平均実質国民所得は約7万3,000豪ドルと、現状の約6万2,000豪ドルから2割増加するといった、明るい未来を描いている。

30年には、消費の主役である中間層の6割がアジア太平洋地域に集中するとの予測も示されている。そうした消費市場の拡大を豪州の雇用拡大につなげたい考えだ。具体的有望分野として、鉱物・エネルギー資源のほか、観光、教育、金融サービス、科学技術、高付加価値品製造、農業、インフラ開発や都市設計、高齢者介護などを挙げている。

また、貿易・投資障壁を引き下げることによってアジア市場でのビジネス・コストを大幅に削減する包括的な地域協定に参加すると明記。2国間の自由貿易協定(FTA)のほか、米国が主導する環太平洋連携協定(TPP)交渉の推進などを通じてアジア太平洋地域のFTA実現に向け取り組んでいくとしている。

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