“適温”状態の豪経済−利下げ観測は後退

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小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

“適温”状態の豪経済−利下げ観測は後退

 

 オーストラリアは、暦年で「21年連続景気後退なし」を達成した。2012年10〜12月期実質GDP(国内総生産)は前期比0.6%増、前年同期比3.1%増。スワン豪副首相兼財務相は「世界で最も底堅い経済成長を実現している国の1つだ」と誇った。豪準備銀行(RBA、中央銀行)は3月の理事会では、2月に続いて政策金利の維持を決定。エコノミストから、豪経済は「熱すぎず、冷たすぎず、ちょうど良い状態」との声も上がっている。

 3月6日に発表されたGDP統計を州別に見ると、資源・エネルギーの開発や輸出が盛んなWA州の最終需要は前年同期比14.2%増、NT(北部準州)では32.8%増となった。

一方で、資源をあまり産出しないVIC州は0.1%減、TAS州は4.6%減となった。人口が最大のNSW州は2.4%増。引き続き豪経済を牽引する資源部門と、それ以外の非資源部門の景気の差が、州ごとの状況の差に反映される格好となっている。

現在の豪経済を牽引する液化天然ガス(LNG)開発などの資源・エネルギー開発投資は、近くピークを迎えるとされているが、RBAのスティーブンス総裁はピーク後に急減するようなことはないだろうとの見方を示している。

直近の民間設備投資統計によれば、13年度(13年7月〜14年6月)の投資額は増加する可能性もあり、少なくともしばらくは歴史的高水準で推移するとの期待が強まっている。経済に急ブレーキが掛かることはなさそうだ。

 

◇RBAは様子見姿勢

 RBAは3月5日の理事会で、3.00%の政策金利を維持する決定した。RBAは11年11月以降、12年12月までに計1.75%の利下げを実施している。

例年1月は理事会が開かれないため、2月に続いての据え置き判断となったが、3月の理事会後に発表されたスティーブンス総裁の声明は、これまでの金融緩和効果が完全に現れるには「まだ時間がかかる」とし、引き続き、これまでの利下げによる効果を見極める姿勢をにじませた。

RBAは、インフレが向こう1〜2年、目標圏内(年2〜3%)に沿うと予想しており、「向こう1年間、成長がトレンドをやや下回る可能性が高いとみられる中で、緩和的な金融政策スタンスが適切」であり、「需要下支えに必要であれば、さらに政策を緩和する余地があろう」と、利下げの可能性に含みを残している。

ただ、豪経済の改善を示す経済指標が相次いで発表される中、エコノミストらの間の追加利下げ観測はかなり後退してきている。

 

◇就業者数が予想の7倍の増加

 その1つが、2月の豪雇用統計。失業率(季節調整ずみ)は5.4%と前月比横ばいだったものの、就業者数が前月比7万1,500人増と、市場予想の1万人増を大きく上回る結果となった。就業者数の内訳では、フルタイムが1万7,800人増加したほか、パートタイムも5万3,700人増加。労働参加率は0.3ポイント上昇し65.3%だった。「労働市場は依然鈍く、就業者数の伸び率が依然小幅」とするRBAの認識よりも大幅に強い内容だった。

これによって、エコノミストらの追加利下げ観測がさらに後退し、豪ドルが値上がりする材料となったわけだが、失業率はともかくも、就業者数の増加幅については慎重に見る向きも多い。

ウエストパック銀行は、労働参加率がかなり上昇していることに触れ、調査サンプルの入れ替えによる要因が「増加の最大90%を占めた可能性がある」と指摘している。新しく追加されるサンプル群は、既存サンプル群よりも就業者である傾向が高いためと説明している。

ほかにもウエストパック・メルボルン研究所の発表による3月の消費者信頼感指数は、110. 5と前月比2.0%上昇、5カ月連続で、楽観と悲観の分かれ目となる100以上となった。最近の株価の上昇も信頼感改善の要因と分析している。

不動産情報サービスのRPデータが発表した2月の住宅価格指数によると、豪主要8都市の住宅価格は前年同月比1.3%上昇した。2012年5月の底以降では3.3%の上昇で、住宅市場は利下げに反応しているという。

RBAのロウ副総裁は3月19日の講演で、住宅価格が上昇に転じ、株価が値上がりし、消費者信頼感も長期平均を大きく上回るようになっていると指摘。世界金融危機対策として09年に半年間継続され、1990年1月以降の現行制度下の最低と並ぶ3.00%という低政策金利が効果を及ぼしつつあるとの認識を示している。一方で、利下げで一般的に期待される反応が得られていない大きな例外は豪ドル相場で、「ほとんど動いていない」と述べた。

副総裁は、豪ドル高について、多くの先進国の金融緩和が相対的に豪ドルを押し上げていると説明。豪ドル高による経済の負の影響を相殺するために、政策金利が低めに設定されており、豪ドル高がなければ、適切な政策金利水準はもう少し高いことを示唆した。

豪ドルは3月24日時点では、なおも対円で08年8月以来の1豪ドル=100円にあと少しで届く状況となっているが、これは豪ドル自体の値上がりというより、安倍政権の経済政策「アベノミクス」期待で円安が進行したことによる要素が大きい。

 

◇457ビザ発給要件厳格化の方針

選挙イヤーの今年、支持率で野党保守連合(自由党、国民党)を大きく下回る与党労働党のギラード政権は、「有権者受け」を狙った政策を次々と繰り出してくる可能性が大きい。

新聞報道などによれば、その1つが、外国人技能労働者が取得する一時滞在ビザ(サブクラス457)の発給要件厳格化の検討だ。企業寄りの保守連合は条件緩和を志向しており、ギラード労働党政権は厳格化推進で豪州人の雇用を優先する姿勢を強くアピールすれば、選挙の争点の1つとすることができる。

457ビザをめぐっては具体的に、外国人を充てようとするポジションの人材不足の証明義務強化、ビザ・スポンサー可能な労働者数の制限、一部申請者に対する英語能力要件引き上げ、豪州従業員に対するトレーニング実施の強制要件化などが検討項目に上がっている。

オコナー移民相は、457ビザの申請が国内労働市場の成長を上回るペースになっていると指摘。制度の乱用を阻止するなどとして厳格化を図る方針だ。ほかにどのような政策が打ち出されるか、注視していく必要がありそうだ。

 


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