新・豪リークス/第1回「日本のアニメが世界を救う!?」

新・豪リークス

現在TBSのシドニー通信員を務める筆者が、オーストラリアの“ホット”な話題を独自の視点で分析する。あっと驚く“裏情報”や“暴露(リーク)情報”も!?

第1回「日本のアニメが世界を救う!?」

アニメのキャラクターに扮するコスプレイヤーが集結する日本のマンガとアニメの祭典が先月開かれた。一時期頭打ちとも言われた日本のコンテンツ輸出産業だが、ここにきて新たな展開を見せはじめている。オーストラリアでもその人気が定着しつつある日本のマンガ、アニメ人気の背景と今後を探る。

◇日本のマンガ・アニメの祭典に 1万6,000人が集結

シドニー・マンガ・アニメ・ショー(SYDNEY MANGA ANIME SHOW)の頭文字を取って「スマッシュ(SMASH!)」と名付けられたイベントが、シドニー市内中心部の西約20キロにあるローズヒル・ガーデンズ競馬場で、8月8日と9日に開催された。

3,000平方メートルを超える広々とした会場には、日本のマンガやアニメ関連グッズの展示ブース、コンサートや各種ワークショップ用のスペースなどが設けられ、コスプレ・コンテストやアニメ・ソングのカラオケ大会などが催された。また、日本の秋葉原さながらのメイド・カフェもオープンし、来店を待つ人の長蛇の列ができた。

今年で9回目の開催となったこのイベントには、シドニー周辺からだけでなくビクトリア州やクイーンズランド州などからも思い思いのコスプレ姿で着飾ったファンらが集結し、主催者によると、2日間で約1万6,000人以上が来場した。

「スマッシュ」に集結したコスプレイヤー
「スマッシュ」に集結したコスプレイヤー

コスプレイヤーなどが集まるこの種のイベントは、オーストラリア国内でも数多く開催されているが、以前はまだまだ“仮装パーティ”の域を出ず、お世辞にもカッコイイとは言えないコスプレも少なくなかった。だが、最近では初音ミクやセーラームーンといった定番キャラクターだけでなく、新作アニメや本当に劇中から出てきたかのような手の込んだコスチュームで周りを魅了するコスプレイヤーも増えてきている。

そのうちの何人かに話を聞くと、もう10年以上もコスプレを続けているという年配の男性や、両親が日本のマンガやアニメの大ファンで、勧められてのコスプレを始めたという10代の女性もいた。

イベント主催者のアンドルー・キウさんに、オーストラリアにおける日本のポップ・カルチャー人気の理由を聞くと「マンガやアニメをインターネットでダウンロードするなど、以前より早くまた安く楽しむことができるようになったことで、若い世代を中心に需要が伸びている」と答えてくれた。

◇コスプレで違う自分を発見できる

そんなコスプレイヤー中の1人、シドニー北部のマッコーリー大学職員として働くセーラ・ラベティー(24)さんを取材した。

アニメ「七つの大罪」の「ディアンヌ」に扮したセーラさん
アニメ「七つの大罪」の「ディアンヌ」に扮したセーラさん

彼女は京都に半年間の留学経験があり、日本語能力もかなりのもの。日本のポップ・カルチャー・ファンだった高校時代の友人の影響で、マンガやアニメが好きになり、それが興じてコスプレも始めた。日本で開催されたアニメ・フェスティバルにもオーストラリア代表として出場経験のあるセーラさんの今回のコスプレは、日本のTBS系で2014年10月から放送されたばかりのアニメ「七つの大罪」の人気キャラクター「ディアンヌ」。

セーラさんは、身長9メートルの巨人族の少女である「ディアンヌ」が身につける体ピッタリのオレンジ色のボディスーツを生地から用意し、インターネットで学んだという裁縫技術で手作りした。完成まで数カ月かかることもあるというコスプレ衣装だが、自分で作り上げる工程がとても楽しいとセーラさんは目を輝かせる。

いつもは大人しい性格で清楚な佇まいの彼女だが、コスプレ姿でイベント会場に登場すると、並み居るハイレベルなコスプレイヤーの中でもひと際目立っていた。「私は普段とてもシャイなんです。でもコスチュームを身につけると自信が持てるの。それぞれの衣装でまったく違う自分がいて、性格だけでなくて行動も変わるのです」と、セーラさんは語ってくれた。

◇アニメ関連市場の新展開

日本人ユニット「QP☆ハニー」加藤久恵さん(左)と垂水由起さん(右)
日本人ユニット「QP☆ハニー」加藤久恵さん(左)と垂水由起さん(右)

連日参加者の熱気で包まれたイベントには、シドニー在住の日本人パフォーマーも参加していた。アニメの主題歌など、いわゆる“アニソン”をカラオケで歌う「QP☆ハニー」という2人組の女性ユニットの垂水由起さんと加藤久恵さんだ。今回主催者に招待され、2日間で6回のステージをこなした彼女たちに聞くと、「オーストラリアでも日本のアニソンは人気で、地元のファンは日本人の自分たちたちよりもいろいろな曲を知っている」と驚きを隠さない。

近年、日本人アニソン歌手によるライブ・コンサートのワールド・ツアーなども毎年行われており、『ドラゴンボールZ』のオープニング・テーマなどを歌う歌手の影山ヒロノブさんのコンサートには1万人のファンが押し寄せることもあるという。

クールジャパンのエースとして期待された日本のアニメの輸出額は近年減少傾向にある。コンテンツの違法ダウンロードや海賊版の影響などさまざまな理由が挙げられるが、前出のイベント主催者が指摘するように、映像などがインターネットで入手しやすくなったことが、逆に世界の日本アニメ・ファンを増やす結果をもたらしている。

また、アニソン・コンサートや関連イベントの売り上げは拡大を続けていて、2013年には60億円の市場規模に達した(日本動画協会調べ)。

「スマッシュ」の会場内で開かれたカラオケ大会の出場者が、いとも簡単に最新アニソンを日本語で熱唱していたのを見たが、そのほとんどが中国系や韓国系の若者だった。

これほどまでに日本のアニメを愛し、アニソンを日本語で歌う人たちが大人になり、“日本を貶める敵”になるとは到底考え難いと率直に感じた。

もちろん例外はあるが、基本原則としてアニソンは、正義や友情、愛について歌い、歌詞に暴力的な表現などは使えないことになっている。まさに日本発の平和の歌を世界中の若者が日本語で歌っているのである。

日本人にとってこれほど誇らしく、素晴らしいことはない。日本のアニメを広めることは、世界に日本の味方を増やし、ひいては地域や世界の安定と調和に貢献するかもしれない。輸出産業としても決しておろそかにはできない日本のマンガやアニメが持つこの夢のような可能性を、あらためて認識する必要があるだろう。


PROFILE
飯島浩樹(いいじま・ひろき)
日本の民放局でニュース番組のディレクターなどを経て来豪。豪SBSの日本語教育番組の制作などに携わった後、TBSのシドニー五輪支局現地代表となる。現在、TBSのシドニー通信員として多くのニュース・レポートを日本に送っている。オーストラリア人の妻、子ども3人とシドニー北部に在住。

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