新・豪リークス/「米豪実働訓練に海上自衛隊が初参加。その目的とは?」

現在TBSのシドニー通信員を務める筆者が、オーストラリアの“ホット”な話題を独自の視点で分析する。あっと驚く“裏情報”や“暴露(リーク)情報”も!?

第29回 「米豪実働訓練に海上自衛隊が初参加。その目的とは?」

2年に1度、豪州沖で行われる米豪実働訓練参加のため日本の海上自衛隊の護衛艦がブリスベン港に寄港した。米国と対中国、対イランの緊張が高まる中、海上自衛隊訓練部隊の司令官に単独インタビューを行った。

ブリスベン港に寄港した海上自衛隊の護衛艦「いせ」。艦内では約400人が招待されたレセプションが行われた(6月17日筆者撮影)
ブリスベン港に寄港した海上自衛隊の護衛艦「いせ」。艦内では約400人が招待されたレセプションが行われた(6月17日筆者撮影)

◇海上自衛隊護衛艦「いせ」がブリスベン港に寄港

全長197メートルで全幅33メートル、満載排水量1万9,000トンの海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」が、今年6月QLD州ブリスベン港に入港した。最大11機のヘリが搭載可能で、新型輸送機オスプレイも発着できる長さ200メートル近い甲板を持ち、まさに「ヘリ空母」の様相を呈する「いせ」は、975億円の建造費で東日本大震災発生のわずか5日後の2011年3月16日に就役した。また、災害派遣を想定して設計されていることから救急医療施設なども充実しており、艦内には安全運航を祈願して伊勢神宮のケヤキの木に伊勢神宮大宮司が揮毫(きごう)した艦名板が掲げられている。

この「いせ」のブリスベン寄港を記念したレセプション(海上自衛隊白根勉海将補と田中一成在ブリスベン総領事共催)が6月21日夜に行われ、地元在住日本人に加え、デ・ジャージー州総督や州閣僚、連邦議員など約400人が招待された。全長120メートル、幅20メートルにも及ぶ広大な格納庫内でのレセプションでは、隊員が制作した豪州先住民の楽器ディジュリドゥを模した竹細工のオブジェなどが展示され、専属の調理隊員によるすしやカレー、和菓子などすばらしい料理の数々が振る舞われた他、日本より運ばれた樽酒の「鏡割り」や隊員による武道、地元関係者による生け花、お茶、太鼓や書道などのパフォーマンスも披露された。

今回、護衛艦「いせ」は、海上自衛隊の輸送艦「くにさき」と共に豪州における米国軍との実動訓練「タリスマン・セイバー19(Talisman Sabre19)」に参加するため同地に寄港した。QLD州のショールウォーター・ベイの演習場及び周辺海域で行われるこの合同訓練は、米国、豪州、ニュージーランド、カナダに加えインドと韓国からもオブザーバーが派遣され、3万4,000人以上が参加して約1カ月間行われる大規模なものだ。2年に1度行われるこの国際合同訓練には、2005年から参加している陸上自衛隊がこれまでで最大規模の約330人を派遣し、今回初参加となる海上自衛隊は「いせ」と「くにさき」の2隻に約500人の人員を派遣した(海上自衛隊発表)。

米豪実働訓練タリスマン・セイバー19で訓練を行う海上自衛隊のエア・クッション艇(LCAC)(写真提供:豪国防省)
米豪実働訓練タリスマン・セイバー19で訓練を行う海上自衛隊のエア・クッション艇(LCAC)(写真提供:豪国防省)

演習では、装甲車の輸送などに使用するエア・クッション艇(LCAC)、水陸両用車(AAV-7)、輸送ヘリコプター(CH-47)、120ミリ迫撃砲などが準備され、7月16日には、昨年3月に発足した「日本版海兵隊」と言われる陸上自衛隊の水陸機動団が初参加。沖合に停泊した輸送艦からLCACや水陸両用車で砂浜に上陸し、相互運用性や同盟国とパートナーの協力を確認した。また7月12日には、米海軍の空母「ロナルド・レーガン」にモリソン豪首相が乗艦し、隊員たちを激励している。

◇尖閣諸島奪還を想定か?司令官に単独インタビュー

「いせ」艦内レセプションの開始前、筆者は今回の訓練部隊の指揮官で海上自衛隊掃海隊群司令の白根勉海将補に単独インタビューする機会を得た。訓練参加の目的などについて聞いた。

――今回の訓練参加の目的は?

護衛艦「いせ」艦内レセプションであいさつする海上自衛隊掃海隊群司令・白根勉海将補(6月17日筆者撮影)
護衛艦「いせ」艦内レセプションであいさつする海上自衛隊掃海隊群司令・白根勉海将補(6月17日筆者撮影)

白根海将補「豪州では、日本にはない広いエリアで一連の流れに沿った訓練が行えます。自分たちの領土や領海を守る、例えば島を取り返すという状況で(米軍と)共同で行う必要がある局面での訓練を始めています。今回の訓練でも隊員の練度を維持することで、いつでもスタンバイできるようにすることが大事だと考えます」

――“島の奪還”とは尖閣諸島を想定しているのか?

「尖閣だけではなく、日本には他にも多くの島があるので、隙のない体制を作る必要があります」

――今後どのような活動を予定しているのか?

「護衛艦の任務として、大きな自然災害発生時において被災者の海からの救出、物資や入浴の支援などがあります。今回は訓練のために来ていますが、それとは別に艦艇に地元の関係者や現地在住の日系人などをお招きすることで、日豪の友好親善や交流活動に貢献できればと考えています」

◇中国艦船が訓練を監視?

米豪実働訓練の監視のため中国のスパイ船が訓練海域に向かうと1面で報じるシドニーの中国語紙(7月8日付澳洲新報Australian Chinese Daily)
米豪実働訓練の監視のため中国のスパイ船が訓練海域に向かうと1面で報じるシドニーの中国語紙(7月8日付澳洲新報Australian Chinese Daily)

一方、この実働訓練タリスマン・セイバー19が開始された7月7日、中国が情報収集艦をQLD州沖に派遣していることが明らかになった。豪国内メディアなどは、中国の「東調級情報収集艦」が前日にパプアニューギニアから訓練海域に向かっていたと伝え、その後7月12日には、豪州の排他的経済水域(EEZ)内にとどまっていると報道した。豪国防省関係者は「今回の訓練には尖閣諸島の有事に対応する陸上自衛隊の水陸機動団が参加しており、中国当局はその能力と米豪両軍との連携に関心があるのだろう。中国の情報艦の動向に適切に対処していく」と豪公共放送ABCの取材に答えた。

米国とイランの緊張が高まる中、米国政府はホルムズ海峡の民間船舶の安全を確保する有志連合構想「海洋安全保障イニシアチブ」への日本の協力を呼び掛けた。もちろん、自衛隊の海外派遣には高いハードルがあり、高額の最新鋭戦闘機F35やオスプレイなどの“防衛装備品”購入に対する世論の反発もある。

日本の同盟国である米国の対中国、対イランの武力衝突の可能性を無視できなくなってきた今の状況では、同じく米国と同盟関係にある豪州に住む者にとって、日本の自衛隊が参加した今回の実働訓練は決して他人事ではないと感じる。


飯島浩樹(いいじま・ひろき)
TBSシドニー通信員、FCA-豪・南太平洋外国記者協会会長、豪州かりゆし会会長、やまなし大使など。2019年5月、小説『奇跡の島~木曜島物語』を出版

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