第12回 2012年のサバイバル


東日本大震災被災者のための折り鶴を見せるノースブリッジ小学校の生徒たち。2011年3月17日

民放現役通信員の豪リークス

在豪16年、現在TBSのシドニー通信員を務める筆者が、オー ストラリアの“ホット”な話題を独自の視点で分析する。 あっと驚く“裏情報” や“暴露(リーク)情報も!?

第12回 2012年のサバイバル

洪水、地震、火山噴火…。まさに激動の1年だった2011年。当コラムも、当初の予想に反して豪州やNZで相次いだ自然災害や日本の大震災に関するニュースについて書くことが多くなった。まるで映画のような出来事が現実に次々と起きた11年を振り返りながら、今後ますます世界の注目が集まる「アジア太平洋地域」において、新たな年をどう「サバイバル」していくかを考えてみたい。

◇2011災害多発の年

大地鳴動、天変地異の災害が世界各地で起きた2011年。オーストラリアでも年明け早々大規模な洪水が発生。QLD州トゥーンバでは1月10日に鉄砲水が襲い、「津波」のような濁流が小さな町のショッピング・モールに押し寄せた。乗用車やトラックなどがまるで木の葉のように流されていく様子が、インターネットの動画投稿サイトにアップされると、その映像は瞬く間に全世界に配信された。それはまさしくこの年に起こったさまざまな自然災害の発生を暗示するかのような光景だった。

その洪水がひとまず収まった矢先の2月3日、今度は同州北部ケアンズに超大型サイクロン「ヤシ」が上陸した。一時アメリカで甚大な被害を出したハリケーン「カトリーナ」に匹敵する「カテゴリー5」までその勢力を拡大した「ヤシ」。交通が遮断され電話も通じなくなる中、ツイッターやフェイスブックでなどで情報を得た住民が、いち早く安全な場所に避難したことも手伝い、ほとんど人的被害は出なかった。

それから約3週間後の2月22日、今度は隣国ニュージーランド(NZ)で大きな災害が発生した。NZ南島最大の都市クライストチャーチを襲ったマグニチュード6.3の直下型地震。市内中心部の大聖堂が、ガラガラと音を立てて崩れる様子がこちらオーストラリアでもリアルタイムで映し出され、ツイッターのタイムラインも現地の生の声で埋まった。我々取材チームは何とか翌日に現地入りすることができたが、昼夜問わず大きな余震がひっきりなしに続き、生きた心地がしなかった。

現地の語学学校に通っていた日本人留学生など28人を含む181人が犠牲となった今回の地震。クライストチャーチ市内中心部は、地震発生後1年近くが経とうとしている今も立ち入り禁止のままで、完全復旧のメドはたっていない。

3月11日、日本で大地震が発生したとの一報が入ったのは、クライストチャーチ国際空港で取材の真っ最中であった。いったい何が起こったのか?手持ちの携帯電話端末に刻一刻と情報が更新されていく。急いで、宿泊場所に戻ると、NZの各放送局も通常の番組を中断し、仙台空港が津波に飲み込まれていく様子など日本からの中継映像を流していた。今やどこにいても世界各地の災害の映像や情報を瞬時に得ることができる時代となった。

世界中に広まった東日本大震災被災者支援の輪は、ここオーストラリアでも盛り上がりを見せた。現地在住の日本人らがフェイスブックなどで呼びかけたチャリティー・イベントや募金活動は全豪各地で行われ、多額の義援金が赤十字社などを通じて被災地に寄付された。また、シドニーの地元小学生などが心を込めて折った折り鶴に書き込んだ思い思いのメッセージは、きっと日本の多くの被災者に届いたことだろう。

東京電力福島第1原発事故。オーストラリアでも一時、日本への渡航自粛勧告が出され、日本からの輸入食品のみならず、輸入中古車などにも放射線検査が課せられるなどした。日本の原発で使用される多くのウランを輸出する豪北部のウラン鉱山周辺に住む先住民アボリジニの人たちも、日本の惨状に心を痛めた。世界最大規模のレンジャー鉱山周辺の伝統的土地所有者であるミラル族の長老イボンヌ・マルガルラさんは、原発事故直後の4月、潘基文国連事務総長に「地震、津波、原発事故の被害を受けた日本国民への同情と悲しみ」を綴った手紙を送った。イボンヌさんは、ミラル族のウェブサイトに日本語で「頑張れ日本、頑張れ東北」と大きく載せている。

◇45歳日本人ボクサーが豪で世界王者に


45歳で世界王者となった西澤ヨシノリ手(左)と筆者(2011年 12月2日Cronulla Leagues Club)

そんな中、明るいニュースもいくつかあった。10月には北部ダーウィンからアデレードまで豪大陸縦断3,000キロを走破するソーラーカー・レースが開催され、日本から出場した東海大学チームが大会2連覇を達成した。このレースでは、途中山火事や悪天候に見舞われるなどアクシデントも多々あったが、沖縄の高校生中心のチームなどが悪戦苦闘する様子がツイッターやフェイスブックに投稿され、おかげで我々取材チームも逐一情報を得ることができた。

また、12月2日には45歳の日本人最年長現役ボクサーがシドニーで世界タイトル戦を行った。元・東洋太平洋ライトヘビー級チャンピオンの西澤ヨシノリ選手は、2007年に日本ボクシング・コミッションから引退勧告を受けた後、オーストラリアなど海外のリングに上がり続けてきた。WPBFとUBCの世界クルーザー級など3つのチャンピオン・ベルトをかけ、シドニー郊外のクロヌラで行われたタイトルマッチの相手は17歳年下のタイ人選手。体力で勝る相手に積極的に向かっていく西澤選手は、1ラウンドから相手のダウンを奪うと、その後も優勢に試合を進めた。地元在住の日本人らの声援もあり、迎えた5ラウンド35秒、西澤選手の強烈な左フックが炸裂、見事KO勝ちを収めた。「中年が頑張ることで子どもたちが夢を見ることができれば嬉しい。今元気がない同世代の人たちに『勇気』というメッセージを送ることができた」と、2012年1月に46歳になる「中年の星」“オヤジ・ボクサー”は、喜びに満ちた笑顔で我々に語ってくれた。

マイナー団体のタイトルということもあり地元テレビの中継などはなく、日本でもほとんど報道されない試合だったが、西澤選手の雄姿は、インターネットの動画投稿サイトなどで見ることができる。

◇2012年を生き抜くカギとは?

11月にオーストラリアを訪問した米・オバマ大統領は、キャンベラの連邦議会で演説し、「米国はアジア太平洋地域でのプレゼンスを最優先していく」と“オバマ・ドクトリン”とも受け取れる重要演説を行った。訪豪中オバマ大統領は、2,500人規模の米海兵隊をダーウィンに配置する計画も発表した。豪国立大学戦略防衛研究センターのラウル・ハインリック氏は、米国は豪州を「中国のミサイルが届かない新たな軍事作戦上の聖域」と見なしていることの表れだと指摘している。また、北朝鮮の金正日総書記が急死したこともあり、2012年はこれまで以上に世界の注目が「アジア太平洋地域」に集まることは間違いない。

さまざまな出来事があった11年を振り返ると、災害などのニュースの現場で、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・メディアが、その都度重要な役割を担っていたことを痛感させられる。原発事故やTPP(環太平洋経済連携協定)交渉などの重要問題において、公に流される情報だけに頼っていては、まさに“生命に関わる”ことが明らかになった1年でもあった。

今まさに「世界の中心」となりつつある「アジア太平洋地域」に暮らす私たちが、政府やマスコミからの情報だけでなく、インターネットなどさまざまなソースにアンテナを張り巡らせ、正確で重要な情報を入手することは、今後ますます大切になってくるだろう。また、それらの情報をしっかり把握し、かつ有効活用する能力をいかに身に着けられるかが、2012年を生き抜く「サバイバルのカギ」となるかもしれない。

※「豪リークス」では読者の皆さまからの記事へのご意見ご感想 をお待ちしています。日豪プレス編集部(npsyd@nichigo.com.au )、またはこちらのEメール・アドレス(goleaks@gmail.com ) までお送りください。


豪リークス

PROFILE
飯島浩樹(いいじま・ひろき)

日本の民放局でニュース番組のディレクターなどを経て来豪。豪SBSの日本語教育番組の制作などに携わった後、TBSのシドニー五輪支局現地代表となる。現在、TBSのシドニー通信員として多くのニュース・レポートを日本に送っている。オーストラリア人の妻、息子2人とシドニー北部に在住。

 

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