オーストラリア人が見たアジア太平洋戦争 岐阜・大垣市で講演会


オーストラリア人が見たアジア太平洋戦争



岐阜・大垣市で講演会
文=青木公

国際ニュース反射鏡

 「かつて日本とオーストラリアは苦い戦争をしたか」というテーマで、岐阜県大垣市で講演会が09年10月18日に開かれた。講師はメルボルン在住のジャーナリスト、アンドリュー・マカイ氏と足立良子さん夫妻。地元の国際交流に熱心な市民グループ、約50人が戦争と平和について語り合った。約3時間の豪日交流を聞きに出かけた。

 地元のグループ「メルボルン倶楽部」代表の早瀬正敏さんが企画した。JETROメルボルン所長だった。退職後、出身地に戻って、ボランティア活動を続けている。メルボルン大火の時は見舞金を集めて贈った。会員は、愛知万博や国際交流の折、ホームステイ者を受け入れるなど主婦を中心に5年前から例会を開いてきた。

交歓会でマカイ氏(右)に質問する岐阜新聞記者交歓会でマカイ氏(右)に質問する岐阜新聞記者

 秋の日本旅行に来ると知って、旧知のジャーナリスト夫妻にオーストラリア人から見たアジア太平洋戦争を語ってもらおうとなった。マカイ氏は、ロンドン、ニューヨーク勤務もしたジ・オーストラリアン紙記者だった。
「1941~43年、日本の脅威にさらされた。フィリピンで日本軍に敗れ、メルボルンに逃げてきたマッカーサー将軍の子息と小学校で同級生だった」
 と戦時中の体験と、英国植民地から現在までオーストラリア史を語った。パプアニューギニアに侵攻した日本軍との戦闘とオーストラリア兵の回顧証言をまとめた足立さんとの共著「Shadows of war」という著作がある。日本軍の暴虐ぶりや、アジア各地でオーストラリア兵捕虜への仕打ちなど、オーストラリア側から見た戦争観を述べた。

やられた側は忘れない

例会でオーストラリア経験を語るメルボルン倶楽部代表の早瀬正敏さん例会でオーストラリア経験を語るメルボルン倶楽部代表の早瀬正敏さん

 足立さんは1973年に渡豪。ラジオ・オーストラリアで日本向けのオーストラリア便りを担当。「女が見たオーストラリア」を書いた。マカイさんと共編の「Shadows of war」がある。
 足立さんは「反日感情は根強い。特にRSL(復員軍人連盟)は、昭和天皇大葬に豪政府が代表を送るのに反対、キャンベラ・奈良の姉妹都市記念公園に『平和』の名称を付けるのに反対。『平和』の呼称ははずされた。RSL代表が日本政府の招きで訪日したのに、メンバーから異論があった。私たちは参戦者、捕虜、日本進駐者にインタビュー。178人の内、日本を許すのは93人、悪感情51人で、対日感情は複雑…。今は日本からの旅行者、ビジネスマンへの感情も鎮まり、友好を深めようとしている」。
 と、対日参戦者の変化を語った。しかし、日豪安保協力や、自衛隊との合同訓練には抵抗感がある。ラッド現首相は、初訪日をヒロシマから始め、日本に好印象を与えたが、新たに「オーストラリアのための戦い」記念日(9月第1週水曜日)を制定した。ダーウィン空爆やニューギニア戦闘を忘れないためだ、とオーストラリア人の心の底流を紹介した。
 メルボルン倶楽部の聴き手は、重い沈黙の中で耳を傾けた。子女をオーストラリアに留学させた母親など戦後生まれ世代が多かったが、友好の中にも、微妙な対日感情があるのを、2人の話から学びとった。
日本の歴史教育に課題あり

足立さん(手前)を囲んで語り合った足立さん(手前)を囲んで語り合った

 茶菓でひと息ついてから、日本語グループ、英語グループに分かれて、質疑と交流の時間へ。
「重い課題をもらった」「オーストラリアと戦争したの知らなかった」「大垣も空爆受けた。戦後は飢えていた」「教育次第だ」と率直な声が出た。
 足立さんは、捕虜収容所があった上越市では、虐待で日本側に戦犯裁判で死刑者が出たが、豪日友好の平和公園ができている、と傷跡を癒す実例が紹介された。
 オーストラリアでは、官民で戦争を忘れない試みが続けられているが、日本の場合、公教育では現代史教育が欠けている実態が、改めて感じられた。2人の豪ジャーナリストの話に、反論や疑問がほとんど出なかったのも、その表れだろうか。

「私の父はニューギニア戦死者」
 メルボルン倶楽部の例会の日、広島では、エバンズ元外相。川口順子元外相を共同議長とした核拡散防止の国際会議が開かれていた。被爆体験をアピールするのはよいが、戦争を起こしたのを知った上でやってほしい、というオーストラリア人講師の指摘には、耳が痛かった。
 メルボルン倶楽部代表の早瀬さんの父は、ニューギニア・ビアク島で戦死した。父の顔を知らない。
 戦時経験を多く語らない日本人は多い。オーストラリア市民は、どうなのだろうか。


筆者紹介・青木公(あおき・ひろし)
朝日新聞社友。日豪プレス創刊時に朝日新聞シドニー支局長。定年後、東南アジア、中南米、アフリカ大陸などの途上国を毎年、訪問・取材。現在、国際協力機構(JICA)サポーター。著書に『ODA最前線』『中高年、はつらつと海を渡る』『ブラジル大豆攻防史』ほか。海外日系紙に寄稿

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