「核」ふり回す北朝鮮狙いは米国と取り引き

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「核」ふり回す北朝鮮狙いは米国と取り引き



韓国と日本はどうするのか
文=青木公
 ベルリンの壁が崩壊、米ソ冷戦が終わって、東西ドイツが統一され09年11月9日で20年経ったが、東アジアの朝鮮半島では南北統一の夢は実っていない。核兵器保有の北朝鮮による冷戦が続いている。東京であった「東アジアの平和と民主主義——北朝鮮問題の展望」というセミナーで、米朝と南北関係をめぐる日韓専門家の討論を聞いた。北の金正日政権は軟化するのだろうか。

 聖学院(せいがくいん)大学の総合研究所は毎年2回「日韓現代史セミナー」を催している。キリスト教育の大学だが、朝鮮半島の専門家が多く、刻々と変わる半島事情を知るには貴重な機会となっている。
「6者協議」は、近隣の中国、日本、ロシアと南北朝鮮、米国が長年、堂々巡りの会議を開いてきたが、ここ1年ほど休眠状態。というのは、「北」が米国との直接交渉を要求して、テーブルにつかないからだ。
 それが09年10月後半になって、北の外務省米州局長リ・ダン氏と米国の6者協議担当大使ソン・キム氏とがNYとカリフォルニアで2回も接触した。北の国連代表や外交官はTVカメラに顔を背け、返事もしないのが常だが、今回は笑顔さえ見せた。北は、念願かなって、米国と直取引できたからなのか。対米交渉の取引道具である北の核が効いたからなのか——。
東京での日韓現代史セミナー
 東京での日韓現代史セミナーの参加専門家は、韓国(南北)統一部長官だった康仁徳氏、日韓国交正常化交渉で日本政府代表だった遠藤哲也氏、聖学院大総合研究所の宮本悟氏、北との交渉、訪問経験者、そして、北の情報に強い小此木(おこのぎ)政夫慶大教授だった。
 韓国政府で南北統一交渉の担当だった康氏は、「09年8月から、北は平和戦術に変わった。オバマ大統領は反核主義だが、ブッシュ大統領のような強硬路線はとらない、と読んだからだ、というが、はたしてそうか。北は4月の憲法改正で軍人を重用して、金正日総書記は自ら国防委員長となった」と核武装をテコに強気になったとの見方で、平和路線には疑いを抱いているようだった。
「オバマ大統領は人道支援以外の経済援助をしてはいけない。辛抱強く核開発をやめさせなければいけない」と強調した。
 遠藤氏は、日本にとって外交関係がない唯一の国は北朝鮮で、ハードルは高い、と核、拉致、経済協力(賠償)の3点を上げた。
「北は米国と直接交渉を求め、6者協議で日本を疎外している。米国はイスラム国イランの核開発に関心はあるが、北朝鮮の核には関心が薄い。北に甘いのが、最も心配だ。日韓が力を合わせて、国連の場で、北に圧力をかけ、北の核武装をくい止めるべきだ」
 北は拉致問題を無視している。政治解決しなければ、決着はつかない。韓国との国交は経済協力(無償3億円、有償2億円)で政治決着をみた。対北でも日本の政治家のリーダーシップにかかっている、と述べた。
日本は拉致に執着しすぎ ?
 小此木教授の分析は、「ブッシュからオバマへの4年半の間に北の核開発は進んでしまった。いく度も核実験をやらせてしまったが、米朝のゲームは終わってはいない。特使を送って、核放棄させようとしている。米韓は非核でまとまっている。日本は、核と拉致の2兎を追う形でとうのか」。
 聖学院大准教授の宮本氏は、国防のために北にゆるやかだった金・盧の両政権と違って、今の韓国政府は、北が核をやめれば経済支援しようという考えで、国防と経済は必ずしも結び付かない、経済優先策に変わってしまった、とみる。開城の合弁工業団地や、北の景勝地、金剛山観光で韓国人はドルを落としている。
「今の北は先軍(軍事優位)外交で、核保有国になって、米国と対等の強国と思っている。北は、米国が核を捨てれば、捨てると、朝鮮半島の非核化を主張している」
 北の危機感をどう冷やすかが課題だという。
 4人のシンポ講師に共通しているのは、日本は核と拉致の2つの問題に執着を続けている。拉致は、冷戦時代に、北が韓国に日本語ができるスパイを送り込む対日工作のために行ったもので、現在の主課題ではなくなっているのではないか、という点だった。
韓国の若い世代は関心薄い
 質疑で韓国要人、康氏は現代韓国について興味ある見方を披露した。
「韓国で南北統一の声は必ずしも強くない。南北の中央ライン(38度線)はそままにして。民族共同体でよいのではないか。統一するには戦争しかないとすれば…。中国と台湾のような形でよいのではないか。北と一緒になっても荒れた北の国土の再開発にはカネがかかる。という考えもある」
 宮本准教授も、経済的に安定した韓国の若い世代は、外国への関心は薄く自分の生活第一で、北朝鮮への関心も少ない、と会場の質問に答えた。
 ベルリンの壁崩壊で統一したドイツのような熱気は、長すぎる冷戦の朝鮮半島では消えたのかもしれない。


筆者紹介・青木公(あおき・ひろし)
朝日新聞社友。日豪プレス創刊時に朝日新聞シドニー支局長。定年後、東南アジア、中南米、アフリカ大陸などの途上国を毎年、訪問・取材。現在、国際協力機構(JICA)サポーター。著書に『ODA最前線』『中高年、はつらつと海を渡る』『ブラジル大豆攻防史』ほか。海外日系紙に寄稿

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