豪州経済がスローダウン RBAは年内に利下げへ

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豪州経済がスローダウン
RBAは年内に利下げへ

 好調が続くオーストラリア経済に陰りが見えてきた。好景気を牽引してきた個人消費がここにきて落ち込みを見せ、住宅販売も低下傾向が続く。これまでインフレ懸念を強めていたオーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)も、経済の落ち込みを防ぐため、利上げのサイクルから一転し、利下げの機会をうかがっている。


◆消費に勢いなくなる◆
 状況が急変したのは7月下旬だ。
 豪連邦統計局は毎月、デパートやスーパーなどさまざまな物品の売り上げをまとめた小売売上高を公表している。7月末に発表された小売売上高(6月)は前月比1.0%減の200億3,650万ドルとなった。月間の下落幅としては過去6年間で最大。アナリストは1.0%増のプラスを予想していただけに「経済はマーケットが思っていた以上に急速に減速している」(ナショナル・オーストラリア銀行)ことが示された。
 小売売上高の内訳を見ると、デパートの売り上げが5.2%減と落ち込みが大きく、衣料・アクセサリーも5.0%の大幅減となった。州別でも、NSW1.0%減、VIC1.5%減、QLD1.3%減、首都特別地域(ACT)1.6%減、タスマニア0.7%減、北部準州が横ばいで、プラスは南オーストラリア(0.3%増)と西オーストラリア(0.2%増)の2州だけ。
 消費の不振の背景には、まずRBAが続けてきた高金利政策がある。RBAは過熱気味の豪経済を冷やすため、昨年の8、11月、今年に入っても2、3月と政策金利を引き上げ、12年ぶりの高水準である7.25%(8月末時点)としている。RBAの狙いは「引き締め政策」で物価上昇(インフレ)を抑えることだ。
 政策金利の上昇に伴い、銀行などの市中金利も上がるため、住宅ローンを抱える持ち家の家庭では家計の負担が増える。住宅ローンの金利が高ければ、住宅の買い控えも起こり、賃貸市場では物件が不足する。アパートや借家の家賃は上がり、豪統計局の資料では賃借料は1年間で平均8%上昇している。
 この高金利政策に物価高が加わった。原油価格(ニューヨーク先物)は7月半ばには史上最高値である1バレル=147米ドル台まで急騰した。原油高騰を受けて、豪州国内のガソリン価格も上がった。シドニーで昨年6月に1リットル=120~130セント台で推移していたガソリン価格は、1年間で160~170セント台まで値上がりした。
 物価の上昇はガソリンにとどまらず、世界的な原料高となり、食料品の価格にも拡大している。これらが家計を圧迫し、消費を冷え込ませた。
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◆9月にも利下げ◆
 国内企業の業績にも陰りが出始めている。4大銀行であるナショナル・オーストラリア銀行(NAB)とオーストラリア・アンド・ニュージーランド銀行(ANZ)では、不良債権問題が浮上。NABにいたっては、最高経営責任者(CEO)が引責の形で退任した。さらに、豪投資銀行第2位のバブコック・ブラウンは経営不安説で株価が急落し、2人のトップが辞任に追い込まれた。
 好調だった株式市場も完全に勢いを失っている。オーストラリア証券取引所(ASX)の株価の指標となる「S&P/ASX200指数」は昨年11月に史上最高値である6,851.5を記録しているが、現在では5,000(8月25日時点)前後で推移し、3割近い落ち込みを見せている。米国のサブプライム・ローン問題に端を発した世界的な信用不安が豪州にも悪影響を及ぼしている。
 このような状況を受け、RBAは豪経済がこのまま悪化していくのを防ぐため、現在の政策金利7.25%の利下げを検討し始めている。RBAが高金利政策を続けてきた主要因のインフレも、8月に入り原油が急落していることから収まりつつある。
 RBAはほぼ1カ月ごとに政策金利の見直しを行っているが、アナリストら市場関係者の間では、早ければ次回の9月2日の見直しの際にも0.25~0.50%ポイントの利下げに踏み切る見方が多い。
 ANZのアナリストは9月に0.25%ポイント、さらに11月にも0.25%引き下げると予測。またウエストパック銀行は9月に0.50%引き下げ、来年初めまでに6.25%まで引き下げると予想。NABも来年半ばまでに6.00%に下げるとみている。
 RBAの政策金利が引き下がれば、それに合わせて銀行の金利も低下する。変動型の住宅ローン金利は下がり、ローンを抱える家計の負担は軽減される。個人だけでなく、企業も借入金のコストが減少し、減速し始めた景気の浮揚効果が期待できる。
◆資源セクターは依然好調◆
 ただ、豪州経済が減速していると言っても、現在の「資源ブーム」をつくり出している資源セクターは依然として好調だ。世界最大の資源会社であるBHPビリトンの今年6月期の純利益は前年比14.7%増の153億9,000万米ドル(約1兆6,900億円)となり、最高益を更新した。鉄鉱石や石炭といった主要産品の需要は衰えず、しばらく資源会社は堅調な業績が続きそうだ。
 また、豪航空最大手のカンタス航空も、原油高騰で航空会社が世界的な不況にある中、6月期の純利益は44.1%増の9億6,900万ドル(約930億円)と、これまた過去最高益をたたき出した。堅調な国内線と格安航空のジェットスターの急成長が要因だが、これは減速しながらも豪州経済が引き続き良い状態にあることの一端を示している。
 RBAの政策金利がアナリストが予想するように、現在の7.25%からたとえ来年半ばまでに6.00%まで引き下げられたとしても、米国(2.00%)や日本(0.50%)と比べるとまだまだ高い状態。これは裏返せば、それだけ豪州経済が堅調である証拠でもある。
 利下げが6.00%前後にとどまれば、景気減速は行き過ぎた好景気を調整する程度のもので、経済全体はしばらく堅調な状況が続くことになる。

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