国民党が9年ぶり政権復帰

ニュース解説
国民党が9年ぶり政権復帰
新首相にキー氏−NZ総選挙

 ニュージーランドの総選挙(11月8日投開票)で野党の国民党がクラーク首相率いる与党労働党に圧勝し、政権を奪回した。オーストラリアと同様に2大政党のニュージーランドで国民党が政権に就くのは9年ぶり。首相は投資銀行出身で、47歳のジョン・キー氏だ。
 同国では好景気を支えてきた住宅ブームが終焉し、景気が急速に悪化。これに最近の世界的な金融危機が加わり、景気後退(リセッション)も指摘されている。このため、国民の最大の関心事項は早期の景気回復。新首相がどこまでその期待に応えられるか。早くも手腕が問われる。


クラーク首相に飽き
 総選挙の結果は、全議席数122のうち、国民党が58、労働党43で、15議席の大差をつけて勝利した。58議席は、選挙制度が変更となった1996年以降、過去4回の選挙で第一党が獲得した議席数では過去最多となる。
 ただ、それでも国民党が単独で過半数に届かない。このため、少数政党のACT党(5議席)、マオリ党(5議席)、統一未来党(1議席)の閣外協力を得て合わせて69議席とし、過半数を確保する。
 クラーク首相の労働党政権が敗北した原因の1つは、1999年11月に就任以降の、9年間という長期政権にあった。
 ニュージーランドと関係の深い隣国オーストラリアでは、昨年11月の総選挙で11年9カ月続いたハワード政権がラッド労働党に完敗した。ハワード氏率いる保守連合(自由党、国民党)は経済が良い状態だったにもかかわらず、長期政権という「飽き」から国民の支持を失った。
 クラーク政権はハワード政権ほどではないにしても、十分長かったことが影響したのであろう。かつて絶大な人気を誇っていたクラーク氏(58)も、メディアの世論調査の支持率では国民党の若い党首であるジョン・キー氏に負けていた。
リセッション入りか
 クラーク政権敗退のもう1つの要因は、国内経済の悪化。ニュージーランドでは、2001年あたりから住宅ブームと移民の増加を背景に好景気となった。労働需給はひっ迫し、賃金が上昇。消費も好調だった。この景気過熱を冷やすため、ニュージーランド中銀(RBNZ)は08年1月に政策金利を8.25%まで引き上げた。
 しかし、この高金利政策が効きすぎたのか、国内経済は今年に入って急速にしぼんでいく。国内総生産(GDP)は今年第1・四半期、第2・四半期と連続でマイナスに陥り、景気後退(リセッション)入りが指摘された。
 景気下降局面に、現在の世界的な金融危機が加わった。RBNZは景気の急速な悪化を防ぐため、今年7月以降、3回連続で政策金利を引き下げ、6.50%まで落とした。
 ここ数カ月、NZドルが対米ドル、対円で下落しており、これは農産物などNZの輸出産業にとって有利な状況だ。ところが、景気減速は世界的な傾向で、輸出先の経済が悪ければ、輸出は伸びず、経済は先行き不透明だ。
ディーラー出身のキー氏
 これら長期政権への飽きと経済の悪化がクラーク離れを引き起こしたが、次期首相となるジョン・キー氏の登場も大きかったであろう。
 キー氏は06年11月、支持率が低迷していたブラッシュ氏の後を引き継ぎ、国民党の党首に就任した。
 キー氏は根っからの政治家ではない。カンタベリー大学を卒業後、スポーツ衣料品メーカーに勤めるが、テレビで為替ディーラーを紹介するドキュメンタリー番組を見て金融界に転身する。地元の金融機関を経て米投資銀行メリルリンチに入行。シンガポール、ロンドンで敏腕の為替ディーラーとして成功を収めた。その後、国民党幹部から熱心に請われ、政治家になったのは02年。わずか6年前だ。
 物腰が柔らかで、若く、経済にも明るい。生活が徐々に厳しくなる中、国民はキー氏に新たなリーダーとして期待を掛けた。ただ、同氏の選挙での当選は今回を合わせてまだ3回。政治家としての実績は少なく、為替ディーラーとして成功した力を今後、政界でも振るえるかは全くの未知数だ。
政策に大きな変化なし
 前政権の労働党と国民党の政策スタンスは、労働党が中道左派、国民党が中道右派。労働党はやや「弱者救済色」が強いのに対し、国民党はやや富裕層、企業寄り。ただ、両党の際立った差はそれほど見られない。
 この10年ぐらいで国民の所得や資産が増加し、かつて低所得者であった層が、中所得者層になるなど、全体的に生活が豊かになっていることもある。支持者の大部分が、労働党、国民党いずれも中所得者層なのだ。このため、今回の政権交代でニュージーランドの政策が大きく変わることはないとみられる。
 外交でも同じだ。ニュージーランドは米国、豪州と3国の安全保障軍事同盟である「アンザス同盟」を結んでいる。しかし、米国とは1985年以来、原子力艦船の寄港を拒否するなど、非核政策で一定の距離を置いている。この方針は国民党政権でも変わらない。
 一方、対日政策では、労働党は日本政府との間で自由貿易協定(FTA)の締結を熱望していた。ニュージーランドにとって日本は豪州、米国に次ぐ3番目の輸出先。FTAを締結する姿勢は国民党に政権が交代しても同じであろう。既に豪州が日本政府とFTA交渉を進めていることから、ニュージーランドとしても早急に交渉入りしたいところだ。
 ニュージーランドは豪州と並ぶ反捕鯨国の急先鋒でもある。その姿勢は超党派で、労働党から国民党に政権交代しても、南極海での日本の調査捕鯨に反対する方針は同じだ。ただ、ここ1、2年、労働党政権は経済関係を重視してか、日本に対する反対姿勢が以前と比べトーン・ダウンしていた。国民党は労働党よりも対決姿勢が弱いことから、国民党政権では、対日スタンスが強硬になることはないと見られる。

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